全般的測定によるゲームの教育訓練効果と費用対効果の確保
Dr. Michael Stiso
教育訓練へのゲーム利用において、効果測定は重要であるが、適切な形で効果測定を行なうことはとても難しい。後づけの測定ではなく、開発段階で学習目標と想定される成果を設定し、その測定方法を含めてデザインしておくことが重要である。ゲーム利用によって期待される効果は学習効果と費用対効果の向上であるが、カイシステムズ社のマイケル・スティソ博士はその測定の考え方と方法を紹介した。以下、プレゼンテーションの要旨。
キーポイント:
1. シリアスゲームの利用によって、シミュレータなどを使った大掛かりな教育訓練よりも大幅にコストを抑えることができる
2. しかし、シリアスゲーム利用によって訓練効果が高くならなければ、費用対効果が高くはなりえない
3. 訓練効果の有無とは、訓練を受ける側が必要とするものを教えているかどうかである
シリアスゲームサミットGDC2005 (5)
教育現場でのCOTS(市販製品)ゲーム利用状況の調査
John Kirriemuir
Kirriemuir氏は、イギリスにおける市販ゲームの学校教育利用に関する調査を2001年から継続して行なっている。今回の発表は、2005年度版調査の中間報告として行なわれた。この調査では、いわゆるエデュテイメントゲームは対象とせず、あくまでエンターテイメント用の市販ゲームが学校教育・学習で活用される事例を対象とし、それらの市販ゲームが教育にいかに活用され、どのような可能性を持っているかを示すことを調査目的としている。今回の調査の現時点での結論は次のようなものである。
1. ゲームの学校教育での利用は増加している。
2. ゲームを教室で利用している教師はその実践状況について喜んで語る。その同僚も否定的ではなく、むしろその活動を関心を持って注目している
3. すべての教師は、自身がゲームプレイヤーというわけではない
4. 教師達はゲームをゲームとしてみるというよりは、ホワイトボードなどと同じツールとみなしている。そしてそのツールがいかに教育・学習の役に立つかという興味を持っている。
5. 利用されるゲームは幅広く、タイクーンゲームやダンスゲームをはじめ、よりユニークなゲームが使われている。
6. 先端を行く教師達は、さらにゲームを利用していくことに興味を持っているが、そのための予算の確保が最大の障壁となっている。
シリアスゲームサミットGDC2005 (4)
ケーススタディ:ビジネス広告と公共広告のためのアドバゲーミング
Dr. Ian Bogost
ジョージア工科大学助教授で、二つの会社のファウンダーでもあるイアン・ボゴスト氏は、アドバゲーミング(広告用途のゲーム利用)の概念と実践事例を解説した。アドバゲーミングはインターネットの普及以前から行なわれていたゲーム利用手法であり、近年になってその動きが拡大している。以下、ボゴスト氏のプレゼンテーション要旨。
シリアスゲームサミットGDC2005 (3)
ケーススタディ:「セカンドライフ」を利用した多人数参加型シリアスゲーム環境の構築
Cory Ondrejka (Vice President, Product Development, Linden Labs)
非戦闘型のMMOG「セカンドライフ」を開発したリンデン・ラボ社の副社長によるスピーチ。
シリアスゲームの特徴(RPG要素のない現実世界的空間、ユーザーによるコミュニティの発達)技術的な工夫(ブロードバンドを前提としたストリーミング配信など)、現在の利用状況(2万ユーザー、ゲーム内外でのアイテム販売の経済効果200万ドル超)の話に一通り触れた後、ユーザーによってゲーム内に作られたシリアスゲーム的仕掛けが紹介された。
シリアスゲームジャパンセッション発表資料・プレス記事
シリアスゲームサミットGDC「シリアスゲームジャパン」セッションの発表資料(藤本)を掲載しました。
Games and COTS Serious Games and COTS games in Japan(PDF)
また当セッションの模様がメディアで紹介されました。
IGDA日本の新氏ら、日本におけるシリアスゲームの動向を発表(Gamewatch)http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050309/gdc_seri.htm
【GDC 2005】日本のシリアスゲームの動向に世界の関心が集まる(ファミ通.com)
http://www.famitsu.com/game/news/2005/03/09/103%2C1110339365%2C37135%2C0%2C0.html
[GDC#05]日本のシリアスゲーム,DirectXなど2日目の見どころ (4Gamer.net)http://www.4gamer.net/news.php?url=/news/history/2005.02/20050222174241detail.html
シリアスゲームサミットGDC2005 (2)
Theory of Fun by Raphael Koster
「Theory of Fun(楽しさの理論)」の著者であるRaphael Koster氏は、人間の情報処理、認知の仕方に絡めて、なぜ人が楽しいと感じるのか、ゲームが持つ価値や機能について次のように解説した。
シリアスゲームサミットGDC2005 (1)
シリアスゲームサミットGDC2005
場所:モスコーニウェストコンベンションセンター (Game Developers Conference内)
日時:2005年3月7〜8日
昨年から始まったシリアスゲームサミットGDC、今年もGDCのチュートリアルセッションの一つとして開催された。昨年の参加者数が約300人だったのに対して、今年は450人以上の参加者数となった。昨年は一部屋のみだったが、今年は3部屋に拡充されて、セッション数も大幅増となった。開催前のプロモーション時の扱いも、今年は格段に大きな取り上げられ方をされていて、シリアスゲームのGDC内での存在感の高まりを示しているようであった。
シリアスゲームサミットGDC:日本事例紹介
3月7日、8日にGame Developers Conference 2005にて行なわれるシリアスゲームサミットGDCで、日本事例紹介のパネルセッションを行なうことになりました。下記のような要領で行なわれますのでGDCに参加される方はぜひ参加をご検討ください。
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シリアスゲームジャパン: 日本におけるシリアスゲーム動向
スピーカー:馬場 章(東京大学大学院助教授)、新 清士(IGDA日本コーディネーター)、
藤本 徹(ペンシルバニア州立大学博士課程、シリアスゲームジャパンコーディネーター)
日時:2005年3月8日(火)11時30分〜12時30分
プレゼンテーション概要:
このセッションは、日本におけるシリアスゲーム動向と、シリアスゲームに有効と思われるCOTSゲーム(市販ゲーム)の可能性への理解を深めることをねらいとしている。東京大学大学院の馬場章助教授、IGDA日本代表の新清士氏、シリアスゲームジャパンコーディネーターの藤本徹氏が、日本におけるシリアスゲームと関連した研究や実践の展開動向を紹介する。まだ欧米ほどにはシリアスゲームの活動が確立されていない中で、日本では、ゲーム型シミュレーションのモデルとしての有用性が高いと思われるCOTSゲームが充実している。このセッションでは、日本国内で展開されているプロジェクトと、シリアスゲームとしてのポテンシャルを持つと思われる日本産COTSゲームを紹介する。東大と韓国の大学で共同で行なわれているMMORPGを利用した教育の研究プロジェクト、神奈川リハビリテーションセンターなどで研究が進められているリハビリテーションへのゲーム利用事例、東京大学ゲーム研究プロジェクトの取り組みなどを紹介する。
<講演者プロフィール>
[馬場 章 氏]
1958年生まれ。専攻は日本近世経済史、歴史情報論。文化財のデジタルアーカイブ制作のための理論と方法を研究。また、近年は学習支援ゲームの開発を通じ、新たなエデュテインメント概念としてゲームのプレジャラビリティを提唱している。コンテンツ創造科学産学連携教育プログラムで「デジタルアーカイブ論」「ゲームプロデューサー論」、教養学部で「ゲームデザイン&エンジニアリング論」を担当。
[新 清士 氏]
1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。立命館大学大学院政策科学研究科講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表。東京大学ゲーム研究プロジェクト共同代表。CEDECアドバイザリーボード委員。著書に『ゲーム開発最前線「侍」はこうして作られた〜アクワイア開発2課の660日戦争』。連載「ゲーム開発のグローバライゼーション」(メディアクリエイト総研「DigitalEntertainment Business」)など。
[藤本 徹 氏]
1973年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。ペンシルバニア州立大学大学院インストラクショナルシステムズプログラム博士課程に在籍。ゲーム技術を活用した教育工学の開発方法論を研究。2004年よりシリアスゲームジャパンのコーディネーターとして、日本でのシリアスゲームコミュニティ形成を推進。
ゲームが教育の場で受けない10の理由
シリアスゲーム研究者のLisa Galarneauが「ゲームが教育の場で受けない10の理由」という記事を書いていますのでご紹介します。
引用元
1.「エデュテイメント」時代、多くのコストをかけたわりにささいな成果しか得られなかった。多くの人はインチキな売り文句にだまされたと感じている。
2. 多くの「教育用」ゲームは「チョコレートで包んだブロッコリー」であって、少しはやる気を起こさせても、なんら教育効果として目立ったものがあるわけではない。
3. 教師やスタッフの多くはいまだIT機器に慣れていない。
4. 教師や親の多くは、子ども達が楽しみながら学ぶということはありえないと信じている。彼(女)らはゲームがつまらないものや有害なものであるという煽りたてるマスメディアの影響を受ける傾向にある。
5. 多くのゲームは、慣れて何かができるようになるまでに20分以上かかる。ほとんどの授業はそんな時間を確保できないし、試験のための勉強に時間を割かなければならないので、ゲームを使って学習するような贅沢な時間の使い方はできない。ゲームは宿題にできないし、学校はデジタルデバイドのために家庭で十分なハードを利用できない生徒がいると考えている。
6. 面白いゲーム/シミュレーションは、概して教育者や学者にとっては教育用途には正確さが不十分であり、逆に正確なものは退屈でありがちだ。
7. ゲーム/シミュレーションは、必ずしも直接的にスキルを学ばせるのに適しているわけではなく、むしろスキルや能力の改善、ものの見方の変化を促すといった、時間が経ってから成果が明らかになるような細かな問題に適している。残念なことにほとんどのゲームはその有効性が教育者から十分に理解されていない。
8. ビジネス界と違って、教育界では学習が重要で不可欠なこととして考えられていない。企業や軍隊でゲームやシミュレーションが活用されているのは、それらの組織で本当の変化や学習が求められているからであり、進化や学習なしには生き残れないからである。
9. ゲームが教育に使えると考えるには、信念と理念とリスクテイクが必要となる。そんなことができるリーダーシップがとれる体制のある組織はそんなに多くない。
10. 成功した教育用のゲームはあるものの、それらは教育の主流からは認識されていない。
シリアスゲーム基礎文献・リソース集
シリアスゲームへの理解を深める上で読んでおきたい基礎文献をご紹介します。このリストはちょっとずつアップデートしていきます。
今のところほとんど英語で恐縮です。これから翻訳化も含め、少しずつ日本語文献を増やしていければよいなと思ってます。
1. 書籍
“Digital Game-Based Learning” by Marc Prensky
ゲームを通した学習の必要性、原理、実践方法などについて網羅的にまとめられている。学習ツールとしてのゲームを開発、活用していく上でまず考慮に入れるべき点をおさらいできる。シリアスゲーム関連の論文ではまず引用される。