シリアスゲームサミットGDC2005 (4)

ケーススタディ:ビジネス広告と公共広告のためのアドバゲーミング
Dr. Ian Bogost
 ジョージア工科大学助教授で、二つの会社のファウンダーでもあるイアン・ボゴスト氏は、アドバゲーミング(広告用途のゲーム利用)の概念と実践事例を解説した。アドバゲーミングはインターネットの普及以前から行なわれていたゲーム利用手法であり、近年になってその動きが拡大している。以下、ボゴスト氏のプレゼンテーション要旨。


アドバゲーミングの定義: ゲームと広告メッセージの組み合わせ
広告のタイプには、 商業広告、意見広告、政治的メッセージ、をはじめとして多様なものがある。
アドバゲーミングの手法には、次のようなものがあげられる。
(1) プロダクトプレースメント(メディア内での商品露出)
Tapper-Budweiser
– Tony Hawk’s Pro Skater
– Super monkey ball- ドール
– The sims- インテル、ペプシの商品露出
(2) ライセンス契約、スポンサーシップ
スパイダーマン2ゲーム:完全ライセンス供与
プレイボーイ・ザ・マンション:部分的な映像利用
カレーハウスCoco壱番屋ゲーム
Kool-Aid Manゲーム(Atari2600)
(3) 特注開発
Nabisco World: ミニゲーム
Jeep Mountain Madness
Howard dean for Iowa
America’s Army
(4) その他
エバークエストII- ゲームアカウントでのピザ注文と決済
PEPSI × NINTENDO DS
ilovebees-XBOX game
Disney’s Virtual Magic Kingdom
アドバゲーミングの可能性: 二種類の広告アプローチ
1)デモンストレーション: 直接的な情報提供(商品・サービスの利用法の紹介など)
2)関連付け: 間接的な情報提供(ユーザーの生活シーンと商品を関連付ける)
関連付けを意図したアドバゲーミングの方が普及しており、広告主は広告メッセージとゲームを融合させることに力を入れている。
アドバゲーミングに対する誤解
– ゲーム市場の成長はユーザーをひきつけるゲームのメディアとしての潜在能力によるものであるという誤った認識
– ゲームをプレイさせることとメッセージを伝えることの関係性への配慮の欠如
そうした誤解を解いて、デモンストレーションと関連付けの性質の違いを理解し、ゲームが広告商品に対してユーザーからどのような反応を得たいかを吟味することが必要である。
ブランド露出、登録者数確保、クリックスルー数、といった消極的な広告効果ではなく、より実質的な内容を伴った効果を求めるべきである。定量的な効果を求めると、逆にアドバゲームの有効性を損なう。質的な効果は従来のブランディングが無意味であるということを示す。広告との直接的な関連性を掴むことは困難である。定性的な効果を求めるには、従来のブランディングよりも高次な目標達成を目指すことが鍵である。
商品広告のアドバゲーム比較:
マウンテンデューゲーム: ゲーム内でのマウンテンデューの位置づけに意味がない
J2Oゲーム:飲酒によって生じる場面(トイレでの用足し)と関連付けることで、J2Oはアルコール分解に効く飲料であるというメッセージを伝えている
Swedish fish開発から得た知見:
– ゲーム開発者の性質: 広告を知らない、配布方法に関心がない、ゲームのことだけ考えている、効果測定はわからない、堪え性がなくすぐに機嫌を損ねる
– ウェブ開発会社: ゲームを知らない、ウェブを作るのとゲームを作るのを同じように考える、自分達の仕事の領域に立ち入られるのを嫌うが、すでに広告代理店に踏み込まれていることが多い
– 広告代理店: ゲームをやってもゲームのことがわからない、視覚的なイメージに気が向いている、配布方法やキャンペーンとの組み合わせを考慮しない、初歩的な効果測定手法にこだわる
– キャンペーン企画会社
– ブランドマネージャー:ゲームを知らない、ゲームは子ども向けだと思っている、以前ゲームを広告に使おうとして痛い目にあっている、配布方法に気が向かない、開発者や出版者に比べてエゴが強い
ゲーム開発者へのアドバイス
– ゲームをメディアの一つとして位置づけて考えること
– ゲームの利用シーンを説明し、文書にする練習をすること
– 関係者と早期から頻繁に連携すること
– 広告代理店から可能な限り逃げること(ジョーク)
– プロトタイプにはいい面と悪い面とがある
– 知的財産権の保護に気を配ること
シリアスゲームとアドバゲーム:
奇妙な仲間?
シリアスゲームは社会変革を志向したもので、アドバゲームは個別具体的な事象に変化をもたらす。アドバゲームは商品・サービスに関するメッセージやアイデアを伝える。プレイヤーは体験し、判断し、考える。マーケティングにも政治活動にも共通して機能する重要な役割を持つ。
政治活動向けのアドバゲームは、政策的な主張やイデオロギーをゲームプレイに内在し、態度変容の触媒的存在として機能する。メッセージとユーザーが触れる社会の中での文脈とを関連付ける必要がある。