ケーススタディ:ビジネス広告と公共広告のためのアドバゲーミング
Dr. Ian Bogost
ジョージア工科大学助教授で、二つの会社のファウンダーでもあるイアン・ボゴスト氏は、アドバゲーミング(広告用途のゲーム利用)の概念と実践事例を解説した。アドバゲーミングはインターネットの普及以前から行なわれていたゲーム利用手法であり、近年になってその動きが拡大している。以下、ボゴスト氏のプレゼンテーション要旨。
「Summit Report」カテゴリーアーカイブ
シリアスゲームサミットGDC2005 (3)
ケーススタディ:「セカンドライフ」を利用した多人数参加型シリアスゲーム環境の構築
Cory Ondrejka (Vice President, Product Development, Linden Labs)
非戦闘型のMMOG「セカンドライフ」を開発したリンデン・ラボ社の副社長によるスピーチ。
シリアスゲームの特徴(RPG要素のない現実世界的空間、ユーザーによるコミュニティの発達)技術的な工夫(ブロードバンドを前提としたストリーミング配信など)、現在の利用状況(2万ユーザー、ゲーム内外でのアイテム販売の経済効果200万ドル超)の話に一通り触れた後、ユーザーによってゲーム内に作られたシリアスゲーム的仕掛けが紹介された。
シリアスゲームジャパンセッション発表資料・プレス記事
シリアスゲームサミットGDC「シリアスゲームジャパン」セッションの発表資料(藤本)を掲載しました。
Games and COTS Serious Games and COTS games in Japan(PDF)
また当セッションの模様がメディアで紹介されました。
IGDA日本の新氏ら、日本におけるシリアスゲームの動向を発表(Gamewatch)http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050309/gdc_seri.htm
【GDC 2005】日本のシリアスゲームの動向に世界の関心が集まる(ファミ通.com)
http://www.famitsu.com/game/news/2005/03/09/103%2C1110339365%2C37135%2C0%2C0.html
[GDC#05]日本のシリアスゲーム,DirectXなど2日目の見どころ (4Gamer.net)http://www.4gamer.net/news.php?url=/news/history/2005.02/20050222174241detail.html
シリアスゲームサミットGDC2005 (2)
Theory of Fun by Raphael Koster
「Theory of Fun(楽しさの理論)」の著者であるRaphael Koster氏は、人間の情報処理、認知の仕方に絡めて、なぜ人が楽しいと感じるのか、ゲームが持つ価値や機能について次のように解説した。
シリアスゲームサミットGDC2005 (1)
シリアスゲームサミットGDC2005
場所:モスコーニウェストコンベンションセンター (Game Developers Conference内)
日時:2005年3月7〜8日
昨年から始まったシリアスゲームサミットGDC、今年もGDCのチュートリアルセッションの一つとして開催された。昨年の参加者数が約300人だったのに対して、今年は450人以上の参加者数となった。昨年は一部屋のみだったが、今年は3部屋に拡充されて、セッション数も大幅増となった。開催前のプロモーション時の扱いも、今年は格段に大きな取り上げられ方をされていて、シリアスゲームのGDC内での存在感の高まりを示しているようであった。
シリアスゲームサミットDCレポート(5)
パネル:従来型e-learning/学習管理システム(LMS)のためのゲームモデル
パネリスト:
Doug Nelson (CEO, Kinection, Inc.)
Andrew Kimball (CEO QBInternational)
Shon Bayer (Developer Enspire Learning)
Paul Medcalf (Director of Multimedia InSite Interactive)
「– 今日のeラーニングシステムの大半は、これまで何百年と続いてきた講義と教科書による教育スタイルに強く影響を受けています。自由なスタイルが必要なゲームをSCORM標準に合わせた形でラーニングマネジメントシステム向けのゲームをいかに開発するかは、ゲームデザイナーにもeラーニングマネージャーにとっても完全に謎となっています。その結果、たいていのeラーニングシステムは、HTMLとShockwave/Flashと、簡単なJavaアプレットといった基本的なテクノロジーで開発されています。このパネルでは、eラーニング向けのゲームデザインの方法と、各種学習タイプごとの事例を紹介します。また、ラーニングマネジメントシステムに利用されるテクノロジーと最新のゲームテクノロジーの差がどのように問題となっていくかについても議論します。–(セッション概要より)」
シリアスゲームサミットDCレポート(4)
レクチャー:流動的学習環境の未来とその評価
スピーカー: Aaron Thibault (IC2デジタルメディアコラボラトリー、研究開発コーディネーター)
「–学習装置としてゲームを利用するのは新しいことではないが、その利用法、そしてさらに重要な学習結果測定の方法は、まだ未成熟であると言ってよいでしょう。ゲームが学習の場における刺激的なテクノロジーであるのと同じように、刺激的な学習効果をもたらしてくれることを人々は期待しているため、効果測定は非常に重要なキーワードとなっています。しかし、まだ我々はゲーム学習の効果測定については無声映画の時代にいるような状態です。このセッションでは、これまでのゲーム学習の効果測定研究を整理し、特に多様な選択肢や経験を織り込んだ流動的学習環境としてのゲームと、従来型の教育方法の比較しながら解説します。参加者はゲーム学習のための測定ツールの概要と、この研究分野が展開する将来像についての知見が得られるでしょう。–(セッション概要より)」
テキサス大オースティン校のIC2デジタルメディアコラボラトリーの研究員として学習用ゲームの研究開発に携わるThibault氏は、レクチャーで次のような点について言及した。
シリアスゲームサミットDCレポート(3)
パネル:ゲームは将来の人の振る舞いをどう形成することができるか?
パネリスト:
ジム・ジー(ウィスコンシン大学教授)
デボラ・リーバーマン(カリフォルニア大サンタバーバラ校教授)
エレイン・レイボーン(サンディアナショナルラボ、アドバンストコンセプトグループ)
デビッド・ラジェスキー(ウッドロー・ウィルソン・インターナショナル・センター・フォー・スカラーズ、ディレクター)
「– 複雑な専門知識の深く理解するには、個々の行動を起こす論理を形成するような対人関係のシミュレーションと、その中で他者と交流できる環境を提供することが必要であると考えられています。ゲームがそれにどこまで対応しているかという点については議論がありますが、ゲームが幅広い学習科目において人々の態度を変える潜在能力を持っているということは明らかです。ウィスコンシン大学教授で「What Videogames Have To Teach Us About Learning And Literacy(ビデオゲームが学習とリテラシーについて教えてくれること)」の著者であるジム・ジー教授がリード役を務めて、ゲームと行動変容の関係、そしてその応用について議論します。(セッション概要より)–」
ジム・ジー(ウィスコンシン大学教授)
「知識伝達のレベルは3段階。1. 知識伝達は簡単である、2. 知識伝達は無理である。何かを知ってもらうには教え込む必要がある。3. 知識伝達は可能、だが難しい。実現するには何らかの働きかけが必要。3番目が教育理論の現状認識である。」ジー教授はこのように切り出し、彼のこれまでの研究からの知見を以下のように整理した。
シリアスゲームサミットDCレポート(2)
ラウンドテーブル:資金調達と研究アジェンダ
”– このラウンドテーブルでは、シリアスゲーム開発に関して重要な課題についてを議論します。資金調達については戦略、補助金獲得テクニック、潜在的な資金源に関する議論が期待されます。また、リサーチアジェンダについては、今後シリアスゲーム開発を支えるブレイクスルーを生み出す研究努力と資金調達がなされるべき、認知科学やコンピュータ科学分野の研究に関する提案を整理する議論が期待されます。(セッション概要より)–”
この様な議論を期待して、会場には50人ほどの参加者が集まっていたが、開始時間を15分ほど過ぎても予定されていたファシリテーターが会場に現れない。ぽつぽつと他の会場に向かう人が出始めたところで、参加者席からEric Zimmerman(Rules of Play: Game Design Fundamentals の著者)が見かねてファシリテーター役を買って出たところでラウンドテーブルがスタート。Ericが流れを説明し、資金源となる補助金提供機関がリストアップされた。たとえば、SBIR/STTR(政府のスモールビジネス革新研究補助制度)、NSF、民間企業、DARPA、陸軍、NIST、Home Land Securityなどである。そしてそれらに申請して補助金を得たことがある参加者から次々に情報提供がなされた。「補助金サイクルは短くなっている」「金額は減少傾向」といった現状の厳しさを示すコメントや、「企画段階で取れる小規模の補助金もうまく活用すべき」「早い段階で具体的なものが見せられることが重要なので早期にプロトタイプを作ること」「具体的な研究計画があるなら補助金申請を考えるべき」などのアドバイスがなされた。
開始時間が遅れたために、研究アジェンダの話は十分に踏み込めなかったが、Ericの機転の効いたファシリテーションのおかげで、参加者各自の持つ知識や情報が共有され、有意義な議論の場となった。Ericがいなければこの場が成り立たなかったことを参加者の誰もが理解しており、口々にEricの健闘を称えた。
参加者はいずれも研究ネタや開発案件を持っている研究者や開発者なので、交わされる議論は具体的であった。このサイトに何の情報があるとか、自分の財団が公募をやってるぞといった話が次々と飛び交い、いくつものプロジェクトが意欲的に動いている勢いが感じられた。シリアスゲームプロジェクトはその性質上、ビッグビジネスよりもスモールビジネス、あるいは大学の研究室が主軸を担う要素が大きい。そのため、そうした小規模なゲーム会社や大学の研究室がその創造性を発揮できる元手を確保できる環境の存在が、このシリアスゲームの盛り上がりを支えている。日本でのシリアスゲーム推進を考える上で、この経営/研究環境の違いが与える影響は大きく、この点をどう乗り越えていくかが重要な課題であると考えさせられるセッションであった。
次回以降の予告:
Day 1
パネル:ゲームは将来の人の振る舞いをどう形成することができるか?
レクチャー:流動的学習環境の未来とその評価
パネル:オープンソースは開発コスト、時間、プロセスの特効薬となるか?
パネル:伝統的e-learning/学習管理システム(LMS)のためのゲームモデル
Day 2
パネル:シリアスマルチプレーヤーゲーミング:何が必要か?
レクチャー:教育の再構成
レクチャー:学習ゲーム用エンジン開発の舞台裏
レクチャー:体験学習の評価方法
シリアスゲームサミットDC レポート(1)
シリアスゲームサミットDCが、ワシントンDCのLoews L’Enfant Plaza Hotelにて、10月18日、19日の二日間にわたって開催されました。これから数回に分けて、そのサミットの模様をご紹介します。私が参加したセッション以外についても、他の参加者のノートなどを参考にできるだけ紹介します。
満員のメイン会場 (Photo by Bill Crosbie)
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キーノートセッション: Jim Dunnigan
“–ジム・ダニガン氏は、古くはボードゲームの頃のウォーゲームから、最新のウォールストリートのシミュレーションモデルまで、長年にわたって我々の言うところのシリアスゲーム開発を手がけてきた開発者と言えます。また彼は、軍の教育訓練用の戦争ゲームやシミュレーション活用にも携わってきました。そうした長年の経験と知見から、これからのシリアスゲーム開発のためのアイデアや将来像について語っていただきます。(セッション概要より)–”
「この分野に関心のある人々がこうして集まってくるのは素晴らしいことだ。だが、残念なのは30年前にこのグループが存在しなかったことだ」というサミット開催への賛辞から始まり、ダニガン氏はテンポのよい語り口で、次のようなことを論じた。
・シリアスゲームの開発は難しい。商用ゲームのようにヒットビジネスではないのでビジネスとして成り立たせるのは大変だし、現実世界の複雑な状況を再現しなければいけない。だがマーケットは巨大である。
・いまや軍勤務者の90%は戦争に関わりのない仕事をしている。戦争シミュレーションだけでなく、多様な業務課題に対応したゲームが求められている。
・シリアスゲームはAddiction(中毒症状、熱中)を生み出すことが何より重要である。
・世の中の仕事は一定の手順とルールによって構成されている。それらをいかに面白く再現できるかが鍵である。どんな仕事でもユーザーがはまれるゲームにすることはできる。
・教育訓練にゲームを使う長所は、低コストで安全な訓練機会を実現できることである。最近のフライトシミュレータはあまり起こらないがミスが致命的になる状況を訓練するのに使われている。
・昔の紙と鉛筆のウォーゲームはとても複雑だった。それをプレイできるというだけでかなりのスキルだった。実際、そうしたボードゲームにはまっていた人たちでゲームデザインの道に進んだ人が結構いる。
・複雑な状況をモデル化するにはオペレーションズリサーチやシステム分析が有効である。そうした知識はゲームデザインのツールとして役に立つ。
・利用可能なAIの精度は完全とは言えないが、ある程度ユーザーが満足するレベルの作り込みで十分である。
・開発サイクルをできる限り短くする必要がある。すばやいプロトタイプ化を繰り返せ。
キーノートセッション (Photo by Bill Crosbie)
ダニガン氏の論点の多くは、シリアスゲームコミュニティでこれまでに議論されてきたことである。目新しくないと言ってしまえばそれまでだが、まだこの分野に馴染みの浅い人たちがシリアスゲーム開発の論点をレビューするのにはとても役立つ内容だった。また、長年の経験から述べているダニガン氏の問題認識と、コミュニティメンバーが議論している問題認識が重なっているということは、我々がシリアスゲーム先駆者の知見を土台にして、現実的な方向に進んでいるということを示していると言える。この二日間のサミットの幕開けにふさわしい基調講演だった。
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他の参加者のノート(英語)もあわせてご覧いただくと補足ができると思います。
Ian Bogost (Water Cooler Games)
Bart Pursel (Penn State)