シリアスゲームサミットDC レポート(1)

 シリアスゲームサミットDCが、ワシントンDCのLoews L’Enfant Plaza Hotelにて、10月18日、19日の二日間にわたって開催されました。これから数回に分けて、そのサミットの模様をご紹介します。私が参加したセッション以外についても、他の参加者のノートなどを参考にできるだけ紹介します。
Mon-KeynoteFullHouse.jpg満員のメイン会場 (Photo by Bill Crosbie)
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キーノートセッション: Jim Dunnigan
“–ジム・ダニガン氏は、古くはボードゲームの頃のウォーゲームから、最新のウォールストリートのシミュレーションモデルまで、長年にわたって我々の言うところのシリアスゲーム開発を手がけてきた開発者と言えます。また彼は、軍の教育訓練用の戦争ゲームやシミュレーション活用にも携わってきました。そうした長年の経験と知見から、これからのシリアスゲーム開発のためのアイデアや将来像について語っていただきます。(セッション概要より)–”
「この分野に関心のある人々がこうして集まってくるのは素晴らしいことだ。だが、残念なのは30年前にこのグループが存在しなかったことだ」というサミット開催への賛辞から始まり、ダニガン氏はテンポのよい語り口で、次のようなことを論じた。
・シリアスゲームの開発は難しい。商用ゲームのようにヒットビジネスではないのでビジネスとして成り立たせるのは大変だし、現実世界の複雑な状況を再現しなければいけない。だがマーケットは巨大である。
・いまや軍勤務者の90%は戦争に関わりのない仕事をしている。戦争シミュレーションだけでなく、多様な業務課題に対応したゲームが求められている。
・シリアスゲームはAddiction(中毒症状、熱中)を生み出すことが何より重要である。
・世の中の仕事は一定の手順とルールによって構成されている。それらをいかに面白く再現できるかが鍵である。どんな仕事でもユーザーがはまれるゲームにすることはできる。
・教育訓練にゲームを使う長所は、低コストで安全な訓練機会を実現できることである。最近のフライトシミュレータはあまり起こらないがミスが致命的になる状況を訓練するのに使われている。
・昔の紙と鉛筆のウォーゲームはとても複雑だった。それをプレイできるというだけでかなりのスキルだった。実際、そうしたボードゲームにはまっていた人たちでゲームデザインの道に進んだ人が結構いる。
・複雑な状況をモデル化するにはオペレーションズリサーチやシステム分析が有効である。そうした知識はゲームデザインのツールとして役に立つ。
・利用可能なAIの精度は完全とは言えないが、ある程度ユーザーが満足するレベルの作り込みで十分である。
・開発サイクルをできる限り短くする必要がある。すばやいプロトタイプ化を繰り返せ。
MonDunniganFullHouse.jpgキーノートセッション (Photo by Bill Crosbie)
 ダニガン氏の論点の多くは、シリアスゲームコミュニティでこれまでに議論されてきたことである。目新しくないと言ってしまえばそれまでだが、まだこの分野に馴染みの浅い人たちがシリアスゲーム開発の論点をレビューするのにはとても役立つ内容だった。また、長年の経験から述べているダニガン氏の問題認識と、コミュニティメンバーが議論している問題認識が重なっているということは、我々がシリアスゲーム先駆者の知見を土台にして、現実的な方向に進んでいるということを示していると言える。この二日間のサミットの幕開けにふさわしい基調講演だった。

他の参加者のノート(英語)もあわせてご覧いただくと補足ができると思います。
Ian Bogost (Water Cooler Games)
Bart Pursel (Penn State)

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  1. 羨望は無知

    [game]シリアスゲームサミットDC レポート(1)

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