ラウンドテーブル:資金調達と研究アジェンダ
”– このラウンドテーブルでは、シリアスゲーム開発に関して重要な課題についてを議論します。資金調達については戦略、補助金獲得テクニック、潜在的な資金源に関する議論が期待されます。また、リサーチアジェンダについては、今後シリアスゲーム開発を支えるブレイクスルーを生み出す研究努力と資金調達がなされるべき、認知科学やコンピュータ科学分野の研究に関する提案を整理する議論が期待されます。(セッション概要より)–”
この様な議論を期待して、会場には50人ほどの参加者が集まっていたが、開始時間を15分ほど過ぎても予定されていたファシリテーターが会場に現れない。ぽつぽつと他の会場に向かう人が出始めたところで、参加者席からEric Zimmerman(Rules of Play: Game Design Fundamentals の著者)が見かねてファシリテーター役を買って出たところでラウンドテーブルがスタート。Ericが流れを説明し、資金源となる補助金提供機関がリストアップされた。たとえば、SBIR/STTR(政府のスモールビジネス革新研究補助制度)、NSF、民間企業、DARPA、陸軍、NIST、Home Land Securityなどである。そしてそれらに申請して補助金を得たことがある参加者から次々に情報提供がなされた。「補助金サイクルは短くなっている」「金額は減少傾向」といった現状の厳しさを示すコメントや、「企画段階で取れる小規模の補助金もうまく活用すべき」「早い段階で具体的なものが見せられることが重要なので早期にプロトタイプを作ること」「具体的な研究計画があるなら補助金申請を考えるべき」などのアドバイスがなされた。
開始時間が遅れたために、研究アジェンダの話は十分に踏み込めなかったが、Ericの機転の効いたファシリテーションのおかげで、参加者各自の持つ知識や情報が共有され、有意義な議論の場となった。Ericがいなければこの場が成り立たなかったことを参加者の誰もが理解しており、口々にEricの健闘を称えた。
参加者はいずれも研究ネタや開発案件を持っている研究者や開発者なので、交わされる議論は具体的であった。このサイトに何の情報があるとか、自分の財団が公募をやってるぞといった話が次々と飛び交い、いくつものプロジェクトが意欲的に動いている勢いが感じられた。シリアスゲームプロジェクトはその性質上、ビッグビジネスよりもスモールビジネス、あるいは大学の研究室が主軸を担う要素が大きい。そのため、そうした小規模なゲーム会社や大学の研究室がその創造性を発揮できる元手を確保できる環境の存在が、このシリアスゲームの盛り上がりを支えている。日本でのシリアスゲーム推進を考える上で、この経営/研究環境の違いが与える影響は大きく、この点をどう乗り越えていくかが重要な課題であると考えさせられるセッションであった。
次回以降の予告:
Day 1
パネル:ゲームは将来の人の振る舞いをどう形成することができるか?
レクチャー:流動的学習環境の未来とその評価
パネル:オープンソースは開発コスト、時間、プロセスの特効薬となるか?
パネル:伝統的e-learning/学習管理システム(LMS)のためのゲームモデル
Day 2
パネル:シリアスマルチプレーヤーゲーミング:何が必要か?
レクチャー:教育の再構成
レクチャー:学習ゲーム用エンジン開発の舞台裏
レクチャー:体験学習の評価方法