投稿者「tfuji」のアーカイブ

シリアスゲームサミットGDCのプログラム紹介

 今年も2/28-3/4にサンフランシスコで開催されるGame Developers Conferenceの初日と二日目にシリアスゲームサミットが行われます。2004年から始まったこのイベントも今年で8回目を迎えます。

 複数トラック行われていた頃に比べるとセッション数はだいぶ少なくなりましたが、その分テーマを絞って行うスタイルを取っています。初日はゲームズ・フォー・ヘルス、二日目は最近注目を集めているゲーミフィケーションをテーマにしたセッションが行われます。

 ゲームズ・フォー・ヘルスは米国のシリアスゲームの中でも当初から活発に活動が続いてきた分野で、研究成果も蓄積されてきています。これまでの動向をおさらいするセッションやいくつかの興味深い事例をピックアップしたセッション、最新事例のショーケースセッションなどが予定されています。

 ゲーミフィケーションはゲーム開発者の間でも賛否が分かれており、今回はこのテーマについてじっくり議論する機会として設定されています。ゲーミフィケーション推進者による事例解説セッションや、識者が賛否分かれて論点を主張しあうディベートセッションなど、面白そうなセッションが企画されており、どのような議論が繰り広げられるか楽しみです。

下記はセッションタイトルの一覧です。プログラム詳細は、GDC公式サイトの日程表を参照してください。
http://schedule.gdconf.com/sessions/track/Serious-Games-Summit

初日:2/28(月)
Pioneers, Promise & Possibilities: Fitting Together Videogames & Health
Paul Tarini (Robert Wood Johnson Foundation)

Hakkar’s Corrupted Blood Plague: How an Outbreak in WoW is Helping Epidemiologists Create Better Disease Models [SGS Health]
Nina H. Fefferman (Rutgers University)

Video Game Play as Nightmare Protection [SGS Health]
Jayne Gackenbach (Grant MacEwan University)

Serious Game Summit Playfest [SGS Health]
Speaker TBA

Healthy Microtalks [SGS Health]
Corey Bohil (Michigan State University), Don Miller (Playpower.org), Ben Sawyer (Digitalmill), Doris C. Rusch (MIT), Tadeusz Stach (Queen’s University) and Derek Lomas (Playpower.org)

My Avatar: Quantified Self Meets Behavior-Change Games [SGS Health]
BJ Fogg (Stanford University Persuasive Technology Lab), Richard Tate (HopeLab/Zamzee), Michael Kim (Kairos Labs), Ricky Engelberg (Nike Digital Sport)

二日目:3/1(月)
Gamification 201 – 60 Tactics in 60 Minutes [SGS Gamification]
Molly Kittle (Bunchball)

Deeper Problems, Deeper Gamification: Solving Hard Real-world Problems with Games [SGS Gamification]
Seth Cooper (University of Washington) and Zoran Popović (University of Washington)

Hyperlocal Game Design: Connecting Social Currency to Real World Currency [SGS Gamification]
Kati London (Area/Code)

We Don’t Need No Stinkin’ Badges: How to Re-invent Reality Without Gamification [SGS Gamification]
Jane McGonigal (Institute for the Future)

GameJamification [SGS Gamification]
Speaker TBA

The Great Gamification Debate! [SGS Gamification]
Jesse Schell (Schell Games), Ben Sawyer (Digitalmill), Jane McGonigal (Institute for the Future), Ian Bogost (The Georgia Institute of Technology)

最近海外で刊行されたシリアスゲーム関連書2010(2)

 少し前に書きかけてすっかり忘れていましたが、海外で刊行されたシリアスゲーム、ゲームと教育・学習に関する学術書や開発ガイド紹介の2回目です。

The
Complete Guide to Simulations and Serious Games: How the Most Valuable
Content Will be Created in the Age Beyond Gutenberg to Google

Learning
Online with Games, Simulations, and Virtual Worlds: Strategies for
Online Instruction

まず、リーダーシップトレーニングシミュレーション「Virtual Leader」のデザイナーで、「Simulations and the Future of Learning
」と「Learning by Doing
の著者として知られるクラーク・アルドリッチによるシリアスゲーム開発ガイドと解説書です。「The Complete Guide・・」の方は、500ページを超えるボリュームで、さまざまなデザインフレームワークや開発アプローチの解説を行っています。

End-to-End
Game Development: Creating Independent Serious Games and Simulations
from Start to Finish

こちらは「Story and Simulations for Serious Games」の著者による2冊目のシリアスゲーム開発ガイド本です。個人開発者向けのシリアスゲーム開発入門書といった内容です。

—以下、出版社サイトより転載—

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ゲーミフィケーションに関するリソース集

 ここ最近、マーケティングやWebサービス分野を中心に、ゲーミフィケーション(Gamification)というバズワードが米国で広がっており、毎日のようにブログ等で言及されて普及が進んでいます。ゲーミフィケーションは直訳すれば「ゲーム化」、ゲームデザインの発想を取り入れて、ユーザーの参加度を高める活動全般を指しています。

 欧米のシリアスゲームのコミュニティでも話題にあがっているのをよく見かけるようになり、次回のシリアスゲームサミットでもゲーミフィケーションをテーマにセッションを組む準備を進めているようです。シリアスゲームはデジタルゲームのメディアの枠内で議論されていましたが、このゲーミフィケーションはゲームデザインの他のメディアの開発やサービス活動への応用であり、ゲーム概念の拡張とも捉えられます。

 ゲーミフィケーションのデザイン手法として紹介されているテクニックは、個別には「ポイント制」や「ランクアップ」、「個人アバター」などすでによく用いられているものが目立ちますが、「達成感の演出」や「進捗状況の可視化」、「チャレンジの連鎖」、「他者との競争・連携」など、さらにゲームデザインの枠組みで捉え直すことで、より効果の高いサービス開発を目指すところに焦点があるようです。個別のメカニクスやデザインテクニックの解説は Gamification.orgのWiki に掲載されています。

 日本語で読める記事は今のところわずかですが、少しずつ出てきています。4Gamerの奥谷海人さんの記事で丁寧に解説されていますし、他にも以下のような記事で紹介されています。

奥谷海人のAccess Accepted / 第284回:ゲームが社会の一部として活用される時代(4Gamer)
http://www.4gamer.net/games/036/G003691/20101122020/

Gamification:なぜいまゲーム化なのか(Social Media Experience)
http://socialmediaexperience.jp/1596

オンラインゲームが”単なる”ゲームでなくなるとき(Venture Now)
http://www.venturenow.jp/column/ogawa/20101206009039.html

 ゲーミフィケーションについてさらに理解するためにまず手始めにあたってみる資料としては、以下の講演動画をご覧になるのがよいでしょう。まず、TEDでのジェーン・マゴニガル、DICE2010でのカーネギーメロン大学のJesse Schell、Google Tech Talkでの「Game-Based Marketing」の著者、Gabe Zichermannの講演は、それぞれゲーミフィケーションの考え方を分かりやすく解説しています。この他にも前述の Gamification.orgのWiki で紹介されています。

ジェーン・マゴニガル 「ゲームで築くより良い世界」(日本語字幕付き)

Jesse Schell @ DICE2010 (Part 1~3)

Gabe Zichermann
Fun is the Future: Mastering Gamification

書籍も関連書はこれから何冊か出てくる様子なので、とりあえず上記の著者による3冊をご紹介しておきます。

Reality Is Broken: Why Games Make Us Better and How They Can Change the World

The Art of Game Design: A book of lenses

Game-Based Marketing: Inspire Customer Loyalty Through Rewards, Challenges, and Contests

今月のシリアスゲーム関連イベント

今年も残りわずかとなりましたが、年内に2つのシリアスゲーム関連イベントが開催されますのでご紹介します。

まず一つ目は、12月16日に福岡市・九州大学芸術工学研究院の主催で「シリアスゲームセミナー」が開催されます。代表藤本が最近の海外のシリアスゲームの動向について講演し、九州大学のシリアスゲームプロジェクトの取り組みの紹介、シリアスゲームのビジネスモデルについてのラウンドテーブルが行われます。すでに満席のようですが、また後日、セミナーの模様などご紹介します。

二つ目は、12月19日、20日に芝浦工業大学芝浦キャンパスで開催される、日本デジタルゲーム学会の年次大会です。以下のようなシリアスゲーム関連の研究発表が行われます。

シリアスゲームを題材としたゲーム開発者教育の取り組み (藤本徹)
学校教育におけるテレビゲームの活用に関する実践的研究(塩田真吾)
環境問題をテーマとしたシリアスゲームの効果測定(財津康輔)

この他にも、立命館大学のサイトウアキヒロ教授のカーナビ開発へのゲームニクスの応用に関する発表など、シリアスゲーム研究に関連した発表が行われます。学会員以外の一般参加も大歓迎です。また、大会に合わせて発刊される学会誌「デジタルゲーム学研究」最新号は「シリアスゲーム研究」特集号ですし、今後も当学会ではシリアスゲーム研究を盛り上げていきますので、ぜひこの機に入会もご検討ください。

開催概要詳細、参加申込は下記学会サイトをご参照ください:
http://www.digrajapan.org/modules/tinyd3/

CEDECでのシリアスゲーム関連セッション

8月31日~9月2日に開催されるCEDEC(CESA Developers Conference)でシリアスゲーム関連のセッションがいくつか行われます。
まず、CEDECの学生向け「『ゲームのお仕事』業界研究フェア 2010」の方で
「シリアスゲームの可能性」と題して藤本が講演します。
http://cedec.cesa.or.jp/oshigoto/2010/program/sessions/O10_O7015.html
日時は9月2日(木)15:45~16:45です。

このほか、CEDECでは次のようなシリアスゲーム関連の注目セッションが
予定されています。九州大学のシリアスゲームプロジェクトの研究グループによるパネルディスカッションと、ベネッセコーポレーションと立命館大学サイトウアキヒロ教授のゲームニクス教育利用プロジェクトのセッションです。

産学官連携によるシリアスゲーム制作は可能か?
-2009年度産学官連携シリアスゲーム制作プロジェクトの実例紹介を通して-
http://cedec.cesa.or.jp/2010/program/AC/C10_P0108.html

「ゲームニクス」の教育利用の取り組み
~学習に効果をもたらすゲーム要素とは~
http://cedec.cesa.or.jp/2010/program/MX/C10_I0047.html

「デジタルゲームの教科書」フリートークラジオ「シリアスゲームの今を語る」

「デジタルゲームの教科書」執筆陣によるトークプログラムをustreamで放送中です。

今週は藤本がゲスト出演して8月19日22時より放送されます。
放送中、twitterで質問も受け付けています。

「デジタルゲームの教科書」フリートークラジオ:第7回「シリアスゲームの今を語る」(8/19)

NASAの宇宙開発オンラインゲーム「Moonbase Alpha」無料配布開始

NASAが開発した宇宙開発マルチプレイヤーオンラインゲーム「Moonbase Alpha」が、本日(7月6日)より、オンラインゲームダウンロードサービスのSteamにて無料配布開始されます。

このゲームは、実際のNASAのテクノロジーをもとにデザインされた宇宙開発体験MMO「Astronaut: Moon, Mars and Beyond」の導入編として公開され、本編は今秋以降順次公開されるとのことです。「America’s Army」の開発を手掛けたことで知られるシリアスゲーム開発会社バーチャルヒーローズが開発を担当しています。America’s Armyでも使用されているゲームエンジンのUnreal Engine 3で開発されており、技術的品質は最新のゲームタイトルに引けを取らず、現在のシリアスゲームタイトルの中では最先端に位置するのは間違いないでしょう。

ゲームの内容としては、プレイヤーは月面基地で起きた災害に対応して基地のシステム復旧に当たるなどの宇宙開発にまつわるさまざまなチャレンジが提供されます。MMOとしてかなり自由度の高いゲーム世界が提供されており、今後ゲームが進むと実在のNASAの宇宙飛行士や技術者が登場して、活動を共にしたり、実際のNASAの活動を体験できるようにデザインされています。また、プレイヤーがUnrealの開発エディタを使って自分でコンテンツを開発もできるように計画されているとのこと。今後若い世代が宇宙開発への関心を高めるきっかけとなるべくこのゲームが普及していくことが期待されます。

ダウンロードしてプレイするにはSteamをパソコンにイ
ンストールしてからゲームをダウンロードする必要があります。詳細はゲームの公式サイトをご確認ください。

Moonbase Alphaトレイラー

参考サイト:
Moonbase Alphaゲームサイト
http://www.moonbasealphagame.com/
NASAのLearning Technologyのゲーム紹介ページ
http://www.nasa.gov/offices/education/programs/national/ltp/games/moonbasealpha/
NASA game gives keys to virtual moonbase (MSNBC)
http://www.msnbc.msn.com/id/38057827/ns/technology_and_science-space/

Unreal Engine 3 Game Technology Fuels NASA MMO Game (Gamerlive.tv)
http://www.gamerlive.tv/article/unreal-engine-3-game-technology-fuels-nasa-mmo-game

最近海外で刊行されたシリアスゲーム関連書2009-2010(1)

 海外では次々にシリアスゲーム、ゲームと教育・学習に関する学術書や開発ガイドが刊行されています。ここ2年ほどの間にまだご紹介していない文献がたまってきましたので、3回に分けてご紹介します。

まずはじめに、IGI Globalから刊行された3冊の論文集です。

Interdisciplinary Models and Tools for Serious Games: Emerging Concepts and Future Directions

Serious Game Design and Development: Technologies for Training and Learning

Gaming
and Cognition: Theories and Practice from the Learning Sciences

同社では立て続けにシリアスゲーム関連の論文集を出版しています(まだこの後も何冊か準備中のようです)。論文の質はさまざまなようですが、これだけのボリュームでこの分野の論文が出てくるというところに研究者の層の厚さの違いが出ているようです。一つの国からではなくて、英語圏各国での研究を集められるところで厚みが出せる面もありますね。

それぞれのトピックの関連研究レビューを行っているので、この分野の研究を行う方には、手元に置いてあると便利な感じです。ボリュームが多いので中身の紹介は割愛させていただいて、以下の目次をご覧ください。

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東京工芸大「シリアスゲーム論」ゲスト講演シリーズのお知らせ

東京工芸大学芸術学部ゲーム学科で開講している「シリアスゲーム論」(木曜5限:16:40-18:10)では、6月3日の授業から3回連続で、ゲストスピーカーをお招きしたゲスト講演シリーズを行います。

第1回: 6月3日(木) 「ゲーム開発上のさまざまなジレンマとその対処法(仮)」
ゲスト: 馬場 保仁 氏(株式会社セガ プロデューサー)
『プロ野球 チームをつくろう!』、『J-LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!』など「つくろうシリーズ」のディレクション、企画を手掛ける。著書に「ゲームの教科書」(共著、筑摩書房)。

第2回: 6月10日(木)「エンジニアの強みとなるゲーム開発スキル(仮)」
ゲスト: 今池正好 氏(株式会社FEACインターナショナル 代表取締役)
学生時代にソフトウェア開発会社を起業、ゲームやWebアプリなどの開発者/経営者として活躍中。

第3回: 6月17日(木)「ユニークなゲーム企画を形にする思考法(仮)」
ゲスト: 山本 貴光 氏(ゲーム作家、文筆家)
94年から2004年までコーエーにてゲーム開発に従事(企画・プログラム)。開発タイトル「That’s QT」「戦国無双」など。著書に「問題がモンダイなのだ」(共著、筑摩書房)、「ゲームの教科書」(共著、筑摩書房)ほか。

受講生以外の方も聴講自由ですので、ご興味ある方は気軽にお越しください。
外部向けの公開イベントではなく、担当教員が一人で仕切っている普通の大学の授業です。ご案内や受付等はございませんが、席は十分に空きがありますので、適当にお越しいただいてご自由にご聴講ください。

場所: 東京工芸大学厚木キャンパス1121教室(11号館2階)
日時: 6月3日、10日、17日(木)5限(16:40~18:10)

アクセス方法:
最寄駅:小田急線本厚木駅
キャンパスへは本厚木駅よりバス(260円)約25分、タクシー(2000円程度)で約20分です。

駅前バス停から東京工芸大学行きで終点で降りていただくと目の前がキャンパスです。
(終点ひとつ前に「東京工芸大学前」というバス停がありますがその次ですのでご注意ください)
バスは平日午後は15分おきくらいで出ています。
バス時刻表等アクセス情報詳細は下記をご参照ください。
http://www.t-kougei.ac.jp/guide/campus/access/