昨年9月に開催されたゲームズ・フォー・ヘルスカンファレンスのレポート連載2回目が掲載されました。南カリフォルニア大学研究員の別府さんが執筆されています。
シリアスゲームの可能性−病気の理解とストレス軽減、そして介護スタッフのトレーニングまで
投稿者「tfuji」のアーカイブ
ベン・ソーヤーによるシリアスゲームサミット見所解説
シリアスゲームサミットGDCの開催に向けて、シリアスゲームサミットプロデューサー、ベン・ソーヤー氏がサミットの見所を解説してくれました。抄訳にしてご紹介します。
親と教師のためのゲームガイド
親と教師のためのゲームガイドWebサイト「ゲームズ・ペアレンツ・ティーチャーズドットコム(GamesParentsTeachers.com)」が立ち上げられ、整備が進んでいます。
このWebサイトは、「デジタルゲームベースド・ラーニング」の著者マーク・プレンスキ氏の新刊 “Don’t Bother Me Mom — I’m Learning” (「ママ、勉強してるんだからジャマしないでよ」)が近日発売されるのに合わせ、ターゲットの親、教師に向けて、ゲームのポジティブな側面への理解を促すためのソーシャルマーケティングキャンペーン的な活動になっています。
サイトの構成は、「ゲーム紹介」「トピック(対応する科目・分野−準備中)」「リソース(ゲームのポジティブな側面について書かれた文献や情報)」となっていて、プレンスキ氏の呼びかけで、協力者たちによって情報が整備されているところです。
シリアスゲームサミットGDCセッション紹介
来月に開催が迫ってきたシリアスゲームサミットGDCでは、二日間で33のセッションが予定されています。セッションラインナップが出揃ったようですので、どんなセッションが行なわれるか、その一部を簡単に訳してご紹介します。
(1) テーマ別シリアスゲームディスカッション
(2) アドバゲーミング、ゲームによるメッセージ伝達、マーケティング
(3) シリアスゲームにおける一般オーディエンスアプローチ
(4) シリアスゲームチュートリアル: シリアスゲームプロジェクトを成功に導くアプローチ
(5) ヒューマンからバーチャルヒューマンへ
ダンスダンスレボリューション、公立学校で採用
コナミの音楽ゲーム「ダンスダンスレボリューション(DDR)」が肥満対策として、米国ウェストヴァージニア州の公立学校の体育教育に採用されたというニュースが話題になっています。
このプログラムは、ウェストバージニア州とコナミの間の3年プロジェクトで、まず103校の中学校(生徒数約6万4千人)にXBoxのコンソールとDDRのソフトが設置されて保健体育カリキュラムの中で利用開始され、3年以内に同州の全765校(生徒数約28万人)の公立学校で展開される計画となっています。プロジェクトには、ウェストバージニア州健康保険局、公的健康保険機関ブルークロス・ブルーシールド、州教育省、ウェストバージニア大学、コナミが参加し、州の主導でDDR利用カリキュラム開発と、効果測定研究が行なわれます。
このDDR導入プログラム全体の費用は、約50万ドル(約6000万円)ほどで、州健康保険局とブルークロス・ブルーシールドが負担し、コナミも7万5千ドルを提供、不足分は州が民間の財源から確保する計画です。
同州は全米の中でも肥満率がワースト3に入り、小学校5年生を対象とした調査で約半数が太り気味か肥満と判定されていることや、同州の子どもの3分の一は糖尿病傾向にあるなどが問題となっています。
前年に、ウェストバージニア州健康保険局とウェストバージニア大の間で実施されたGames for Healthプロジェクトで、DDRの効果を研究するパイロットテストが実施されており、その成果を受けての本格展開となったようです。
ソース(いずれも英語)
Gamasutraの記事
CNNの記事
USA Todayの記事
シリアスゲーム本2冊リリース
米国でシリアスゲームの一般解説本「Serious Games: Games that educate, train, and inform」と、開発者向けの入門書「Developing Serious Games」が発売されました。いずれもこれまでに議論されてきた内容を網羅的にカバーしてあり、資料的な情報も収録してあるので、これからシリアスゲームについてフォローしたい方にお勧めの内容に仕上がっています。GDCのシリアスゲームサミットをはじめ、シリアスゲーム関連のイベントに参加される方には、予習テキストとしてとても重宝すると思います。
シリアスゲームを斬る
米国のゲーム情報サイト1up.comに、“You can’t be serious!: five famous game designers rehabilitate the world’s most most boring games”(冗談でしょ!五人の有名ゲームデザイナーが世界で最も退屈なゲームを修復)という記事が掲載されましたのでご紹介します。Virtual U、Virtual Leaderなどの5つのシリアスゲームを、エンターテイメントゲームとして作り変えるとしたらどんなデザインにするか、五人の実績あるゲームデザイナーたちが提案するという内容です。
ゲームのデザイン上の問題点を指摘したり、ゲームの質を上げるためのアイデアを出すというよりは、それらのゲームをシリアスでなくするためのアイデアを適当に出すにとどまっています。本家のシリアスゲームMLでは、「ジョークとしては面白いけど、意味はない」「シリアスゲームバッシングしたい人がいるのでは」「オレらもヘイローとかGTAをシリアスゲームとしてデザインしたらどうなるかやってみたら面白いんじゃない?」といった議論がなされていました。
北米ではシリアスゲームも、一般ゲームサイトで取り上げられてネタにされるだけの認知を得てきたということでしょう。
お知らせ
ML他で以前に告知しているものばかりで、ややネタが古くなってしまった感がありますが、シリアスゲーム関連のお知らせです。
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1.医療健康系ゲーム情報提供のお願い
「ゲームズ・フォー・ヘルス(Games for Health)」というシリアスゲームイニシアチブの分科会と連携して、健康・医療・福祉関連のシリアスゲームに関する調査を始めました。
健康・医療・福祉関連のシリアスゲームに関する現時点での動向をまとめて、ゲーム業界の当分野への参入や活動活性化に資することを目的としています。健康・医療・福祉分野でのゲーム活用事例、研究事例に関する情報を募集しています。
収集した情報は、並行してシリアスゲームジャパンWebサイトで公開する予定です。「こんなニュースを見た」「あまり知られてないけどこういうゲームがある」という関連情報をご存知の方はぜひご連絡くださいますようお願いいたします。特に、ゲームの医療や健康への効果を研究した事例をさがしています。論文や記事を見かけた方はぜひご一報ください。
海外での「シリアスマンガ」展開
シリアスゲームのMLへの投稿で、「翻訳アニメマンガ出版社のViz mediaと世界銀行が提携して、教育マンガを制作」というニュースが流れていました。「1 WORLD MANGA」シリーズというのを立ち上げて、貧困、エイズ、環境などの諸問題をテーマにした教育マンガを制作し、販売して利益を寄付することに加え、世界300ヶ所の図書館に無料配布する計画だそうです。
「世界銀行とVIZメディアは、若い読者たちに人類が直面するさまざまな重要課題について学んで関心を持ってもらうというビジョンを共有する。そして非常に人気の高いマンガのスタイルは、世界の開発諸問題についての教育を若者たちに行なっていく上で、強力な伝達手段となると考えている(上記リンクのプレスリリースより)」
アニメやマンガを教育・啓蒙に利用しようという発想は、日本では相当古くからあって、図書館に行けば歴史マンガ、企業や公共機関の広報パンフ等でもマンガは手法としてよく使われています。多くの一般のマンガも、教育的な要素を持ちながらも商業ベースで成功していることも、日本ではごく普通にマンガが人々の教養形成の重要な要素として文化に根付いていることを示しています。
マンガが日本社会にどう根付いていったかを見ていくことで、日本でのシリアスゲームの展開に関するヒントが多く含まれているようです。
企業のシリアスゲーム投資
「マイクロソフトがシリアスゲームに資金提供」という情報を
山口浩さんのブログからトラックバックで送っていただきました。山口さんのブログでは、当サイトがあまりカバーしていないMMOG関連の話や、私がサボっている英語での情報発信などされています。
アメリカのシリアスゲーム系プロジェクトへは、紹介記事にあるマイクロソフトや、リープフロッグ社(Education Arcadeプロジェクトのスポンサー)など、企業から直接提供される資金の流れもあります。金額の多寡はあるかと思いますが、日本でもゲーム会社やITメーカー系の財団がいくつかあって、研究助成が出されていたり、企業の寄附講座として大学へ資金提供される例がありますので、その流れで今後シリアスゲームプロジェクトへの資金提供も進んでいくと期待しています。
#まだどこもやっていない今のうちは不安もありますが、誰もやっていないところにこそ旨味があるということで、ぜひ積極的にご検討いただければと思います>ご関心をお持ちの企業の皆さま