投稿者「tfuji」のアーカイブ

シリアスゲームワークショップ:コンピュータゲームで英語を学ぶ

「シリアスゲームワークショップ:コンピュータゲームで英語を学ぶ」参加のご案内
ワークショップのねらい:
このワークショップは、英語を学びたくていろいろがんばっているのになかなか身につかない人にゲームを利用した新たな学習方法を提供することを一番のねらいとしています。英語学習がうまくいかない人の学習の障壁はいろいろと考えられますが、一番の問題は、自分に合った学習システムが構築できてないことです。ここで言う学習システムとは、学習の習慣付け、学習リソースへのアクセス、学習へのフィードバック、練習機会確保などを指します。高いお金を払って英会話学校に行って効果があるのは、教え方がうまいからではなくて、自分の学習システムを作りやすい状況を提供してくれるからです。学習システムさえ何とかすれば、高いお金を払う必要も、学校に行く必要もありません。
ゲームは学習のモチベーションを高めてくれる有効な学習ツールです。学習の苦労を分散させたり、興味の高さややる気でカバーしたりするのにゲームはとても有効です。シリアスゲームの関心はそのゲームのツールとしての長所にあります。そして、ゲームは英語を学ぶのにも効果がありますが、新しい言語を学ぶのは当然苦労が伴います。ただ空き時間に英語のゲームをやるというのは続かなくて、やはり他の学習方法と同じく、自分の学習システムの中での位置づけを明確にしながら利用する必要があります。ゲームにDVDなどのメディアを組み合わせて利用することで、高い英会話学校に通う10分の一の予算で、より高い学習効率のよい学習システムを組むことも可能です。
今回のワークショップでは、英語学習にゲームを徹底活用する方法を一緒に考えながら開発していきます。ワークショップ終了時までに、参加者各自が自分のニーズに合った英語学習システムを整備し、実践できるようになっていることが目標です。今までいろいろな学習方法を試したけど、なかなか英語が身につけられない、学習が続かないという人にはとくにこのワークショップの効果を実感してもらえることと思います。
ファシリテーター:藤本 徹(シリアスゲームジャパン・ペンシルバニア州立大学)
活動内容:
・英語学習に関するワークシートの記入〜オンラインカウンセリング
・参加者ごとのオリジナルな学習メニュー作成
・メニューに沿った学習活動〜定期的な振り返りログ作成〜学習サポート
※学習メニュー項目例:
・マルチプレイヤーオンラインゲーム世界探索
・英語版ゲームプレイ
・好きなDVD鑑賞
・オンラインクエスト、情報探索
・学習振り返りログの作成
このような内容を基本に、ゲームの選択、学習頻度等を個別に設定して、メニューを作ります。
全てオンラインで活動します。
募集定員:5名様
参加費:無料(ゲームなど、学習リソースの購入は必要に応じて発生します)
対象者:英語を身につけたい人なら誰でも(レベルは問いません)
実施期間:6〜8週間程度(10月上旬〜11月下旬)
申し込み方法:
E-mailでsgjworkshop [atmark] anotherway.jp 宛に下記を記載の上、10月2日(日)までにお申込ください。
募集定員に達し次第締め切ります。
・名前
・職業
・現在の英語レベルとどれくらい英語ができるようになりたいか
・ゲーム歴
・お持ちのパソコンの情報(デスクトップ/ノート、OS、だいたいのCPUなどのスペック)
・その他、簡単な自己紹介とこのワークショップへ期待することなど

MMOGの教育利用に向けた研究の方向性

 多人数参加型オンラインゲーム(MMOG)を教育用途で利用するための基礎研究の枠組についてまとめた資料を公開します。
藤本徹:”多人数参加型オンラインゲームの教育利用に向けた研究の方向性”,
http://anotherway.jp/seriousgamesjapan/archives/files/MMOGResearchFrameworks-Fujimoto.pdf, (2005)

引用は自由ですが、一般的なオンライン著作物の取り扱いルールを守って利用してください。

CEDECシリアスゲームセッション記事

 CEDECでのシリアスゲームセッションは無事に終了しました。関係者の皆さま、ご協力ありがとうございました。今回の講演内容の紹介記事がIT mediaに掲載されています。
CEDEC 2005リポート: “ゲームは有害だ”と言うだけでは社会的にも停滞感が生まれてしまう (IT media Games)

CEDEC講師メールインタビュー

8月29日〜31日に開催されるCEDECの講師インタビューに答えた内容がGameWatchで掲載されました。以下、藤本回答分を掲載します。他講師のインタビューその他詳細については同サイトをご参照ください。
—–(以下、掲載サイトより抜粋)
R01 シリアスゲーム研究・開発の最新動向
R03 ゲーム業界にとってのシリアスゲームの可能性と課題
シリアスゲームジャパン コーディネーター 藤本 徹 氏
Q. 今回、講義を行なうことになった経緯を教えてください。
 今年3月のGame Developers Conferenceで行なわれたシリアスゲームサミットで、IGDA日本の新さんと東大の馬場教授にご協力いただいて、日本のシリアスゲームを取り巻く状況を紹介するセッションをやりました。その準備を進めている段階で新さんから、CEDECのIGDAアカデミックの枠でシリアスゲームのセッションをやりたいですね、と提案をいただいたのがそもそもの発端です。Skypeやメールで新さんと何度かやり取りしながら企画を練っていって、今回の講演とパネルの2本立てセッションの形となりました。
Q. 今回の講義でどのようなことを伝えたいでしょうか? 講義に対する意気込みを教えてください。
 今回のセッションの基本的なねらいは、講演の方でシリアスゲームのコンセプト、そしてシリアスゲームをデザインする上で重要な、学習とゲームの関係を整理するためのフレームワークを理解していただくこと。それからパネルの方では、日本のシリアスゲーム事例となるゲームの開発に携わられた開発者の方々とのディスカッションを通して、シリアスゲーム開発の実際の状況や課題、可能性についての理解を深めていただくことです。それによって、シリアスゲームに関心のある方や今後企画やデザインを手がけていこうと考えている方たちがさらに前進するための燃料補給となるようなセッションができればと考えています。
 欧米ではシリアスゲームはブレイクして、ここ一年ほどの間に参入者も大幅に増え、相当な盛り上がりを見せています。それは端的に言えば、ゲームには社会を変えるパワーがあると信じる人々の輪が広がり続けている現象です。教育や社会的活動に取り組む人たちにとっては、ゲームは他の手段では成し得ない成果をもたらしてくれる強力なツールであり、ゲーム産業にとっては、市場の飽和や、暴力的描写などで社会からの風当たりが強い状況を改善するための一つの方策として取り入れられてきています。日本でもそうした状況は共通しており、シリアスゲームのコンセプトをうまく取り入れていくことで、ゲーム産業、さらには社会全体が行き詰まった状況に働きかけていくことができると思います。
 欧米と日本のゲーム文化には違いがあり、ゲームをする人、しない人ともゲームに対する捉え方が異なる面があると理解しています。シリアスゲームの展開の仕方も、欧米でやっていることを日本にそのまま持ち込んだだけでは、まずうまくいきません。日本には日本のゲーム文化や社会的特性に対応した日本流のシリアスゲームが必要であり、今回のセッションは、その形成のための第一歩ですので、私も気合を入れて臨みたいと思っています。
Q. 受講者に何を学んでほしいのでしょうか?
 シリアスゲームは、「何かのためにゲームを利用する」という実用性の部分に目が行きがちですが、その部分だけを安直に理解すると、あまり楽しい感じはしてこないと思います。特に開発者の方から見れば、ゲームの文化やアート性のようなものが取り払われて、何だか日用品や道具作りをするようで、面白みを感じないように捉えられてしまうかもしれません。しかし実は、シリアスゲームの実用性の部分は、社会の中にゲームが入り込むための「トロイの木馬」であって、ゲームによってもっと本質的に教育や社会のあり方自体を変えていこう、というのがシリアスゲームの根底にあるコンセプトです。
 今のゲーム市場は、個人の限られた娯楽時間を他の娯楽産業との間で奪い合う中で市場を拡げ、その過程でゲームをする人、しない人の間の断絶を深めてきた側面があると思います。またゲームは非常に強力で魅力的な娯楽なため、個人の娯楽時間そのものを拡げてきて、もう拡げようがないところまで来て飽和状況にある、という見方ができます。
 そういう状況でふと周りを見回すと、敵だらけなんですね。娯楽時間のパイをゲームに奪われた他の産業、活字メディアも映像メディアも、アウトドア系の娯楽も、みんな分け前が減りました。ゲームに熱中するゲーマーの周辺のゲームをしない家族、友達、教師たちにしてみれば、ゲームのおかげで自分たちの優先順位が下がって面白くないわけです。PTAや教育関係などの非ゲーマーコミュニティからの過剰なまでのゲーム拒否反応には、そうした状況が背景にあると言えます。熱心なゲーマーにしてみても、社会生活のための時間は必要であり、ゲームに費やせる時間には限界があります。そうした飽和状況の中で、今の娯楽時間のパイの奪い合いモデルを続けていくと、より壮大なもの、刺激的なものを志向し続けざるを得なくなり、コストは増大し、性や暴力などの安易な刺激に頼ることで、非ゲーマー社会との断絶は広がり続けます。
 シリアスゲームはその実用性によって、ゲーム産業がこれまでカバーできなかった個人の娯楽以外の時間や、ゲームをやらない人々の時間をターゲットにすることができ、非ゲーマー社会との融和の道筋を作ることができます。社会生活の時間にゲームをする、学習や訓練のためにゲームをする、ということが起これば、これまでのやり方ではアプローチできなかった領域もゲーム産業が対象とする市場になります。
 そしていったん人々の娯楽以外の学習や社会生活の時間に入り込んでいくと(あるいは、娯楽の時間が他の社会生活の時間と融合していくようになると)、その時間のあり方自体が変わっていきます。楽しんで学べるようになったり、難しくてできなかったことができるようになったりして、ゲームの持つパワーが個人の営みそのものを変え、個人の持つ可能性を引き出すエンジンとして機能するようになります。今回のセッションをきっかけに、ゲームによって社会を変える、ということを「シリアス」に捉え、その実現のために活動しようという方が少しでも増えることを期待しています。

GLSカンファレンスビデオ無料配信中

先日レポートでご紹介した、GLSカンファレンスのビデオがこちらのWebサイトで公開されていて、無料で視聴できます。当日3部屋あったうちの一部屋で行なわれたセッションが収録されていました。ヘンリー・ジェンキンスと、ジェームス・ジーのゲームカルチャーのセッション、MMOG世界経済の研究で有名なエド・カストロノバ、Rules of Playの著者エリック・ジマーマン、Thief1, 2のゲームデザイナーとして知られるダグ・チャーチ、教育ゲーム研究プロジェクト、エデュケーションアーケードの中心メンバーであるカート・スクワイアらによるセッションの模様をご覧いただけます。

シリアスゲーム関連イベント最新情報

シリアスゲーム関連イベントがいくつか追加されてますのでご紹介します。
CEDEC (CESA Developers Conference)IGDAアカデミックセッション
2005年8月29日(月)(CEDECは29〜31日開催)
at 明治学院大学(東京都港区白金台)
講演「シリアスゲーム研究・開発の最新動向」(10:00-11:30)(講師:藤本)
パネル「ゲーム業界にとってのシリアスゲームの可能性と課題」(12:30-14:00)
パネリスト:(五十音順、※一名追加されました)
小野雄次郎氏 ナムコ (インキュベーションセンターBE機器グループ開発チームリーダー)
柴田賀盆氏 フリー (「私の夢&銀行」ゲームデザイナー)
鈴木政幸氏 サクセス (「吉野家ゲーム」プロデューサー)、他調整中
モデレーター: 藤本徹(シリアスゲームジャパンコーディネーター)
http://cedec.cesa.or.jp/
シリアスゲームショーケース (各種シリアスゲームのデモンストレーションイベント)
at デイナセンター, ロンドンサイエンスミュージアム
2005年8月30日
Games for Health
at メリーランド大学スクールオブメディシン(メリーランド州)
2005年9月22日、23日
http://www.gamesforhealth.org/
フューチャープレイ
at ミシガン州立大学
2005年10月13日−15日
http://www.futureplay.org/
トレーニング・フォール カンファレンス&エキスポ (オンライン教育・eラーニング系のカンファレンス)
at ロングビーチカンファレンスセンター(カリフォルニア州)
2005年10月17日−19日
www.vnulearning.com
シリアスゲームサミットDC 2005
at ワシントンDC
2005年10月31日、11月1日
http://www.seriousgamessummit.com/

歴史学習のためのシミュレーションゲーム

歴史学習のためのシミュレーションゲーム「メイキング・ヒストリー」がまもなく正式リリースされます。
このゲームは、第二次大戦中のヨーロッパの政治経済状況をシミュレートして、プレイヤーは各国の宰相として意思決定を行なうというものです。学校の授業で利用しやすいように、教員ガイドが提供され、ゲームバランスの調整やルール設定などを簡単な操作で行なえるようにデザインされているのが特徴です。第二弾はアメリカ独立戦争のシナリオで、その後も他のシナリオが提供されるようです。開発ツールも同時にリリースされて、それを使って独自のシナリオ作成や細かいデータ調整もできるようです。歴史を学ぶのにシミュレーションゲームが有効だということはずっと言われてきていますが、授業で利用するにはいろいろと困難が伴うというのが課題でした。このゲームは授業での利用を前提に開発されて、そうした困難を可能な限り解消した仕様になっているようです。
市販タイトルの方では、年末発売予定の「シビライゼーション4」が開発ツールを従来からこの手のゲームで提供されていたマップエディタだけでなくて、XMLでのデータ作成と、パイソンでのスクリプト作成が可能な形で提供されるというのが話題になってます。シミュレーションゲームでMOD作成が自由にできるのはこれまでになかったのですが、UnrealやHalf-lifeでMOD作成が盛んになったような流れが今後このゲームについても起こることが期待されています。

CEDECでのシリアスゲームセッション

先日のエントリーでお知らせしましたCEDECのセッションについての追加情報です。お申込はCEDECサイトからオンラインで申込ができます。
どうぞ皆さんお誘い合わせの上ご参加ください。

CEDEC (CESA Developers Conference)IGDAアカデミックセッション
日時:2005年8月29日(月)(CEDECは29〜31日開催)
場所:明治学院大学(東京都港区白金台)
講演:「シリアスゲーム研究・開発の最新動向」(10:00-11:30)
講演者:藤本徹(シリアスゲームジャパンコーディネーター)
内容:
日本国内でも、エンターテイメント用途以外でのゲーム利用を意味する「シリアスゲーム」という言葉が徐々に普及し始めてきているが、欧米においては、多数の研究者、開発者、資金提供者らの参入に後押しされて、研究も開発も着々と進んでいる。これから日本のシリアスゲームを確立し、プロジェクトを成功させていく上で、すでに総論から各論段階に入りつつある欧米の研究・開発動向を先行事例として把握しておくことが有効であることは間違いない。
本セッションでは、シリアスゲームの基本的な考え方と枠組を整理し、これまでにどのような研究や開発が行なわれてきているのかを紹介する。欧米において展開されている、最新のシリアスゲーム研究・開発事例についての考察、ゲームがもたらす学習効果について教育工学的観点からの解説などを行なう。
パネル「ゲーム業界にとってのシリアスゲームの可能性と課題」(12:30-14:00)
パネリスト:
柴田賀盆氏 フリー(「私の夢&銀行」ゲームデザイナー)
鈴木政幸氏 サクセス(「吉野家ゲーム」プロデューサー)、他調整中
モデレーター:
藤本徹(シリアスゲームジャパンコーディネーター)
内容:
欧米で研究と実践が進むシリアスゲームは、日本でどのような形で展開されるのか。日本のゲーム業界にシリアスゲームが新たな可能性をもたらすとすれば、それはどのようなものか。シリアスゲームと呼ばれる前から、日本のゲーム会社各社ではすでにさまざまなシリアスゲーム的取り組みを行なってきており、それら各社の取り組みをシリアスゲームとして捉え直すと、これまではあまり注目されなかった側面からその価値が浮き彫りになってくる。
本パネルセッションでは、シリアスゲーム的な要素を含むゲーム開発プロジェクトを手がけたゲーム会社各社のパネリストとともに、ゲーム業界にとってシリアスゲームがどのような意義を持ち、新たな機会をもたらすか、そしてこれから考慮すべき課題は何かを議論する。