任天堂のWiiのゲームをリハビリテーションに利用しようという米国の実践事例が紹介されています。
Doctors Use Wii Games for Rehab Therapy(Excite News)
http://apnews.excite.com/article/20080209/D8UMOS4G0.html
記事では、米国ノースカロライナ州の病院など複数の病院で「Wiiスポーツ」をリハビリテーションのために利用して、患者の身体機能改善につながった例や患者のコメントが紹介されています。また、効果については体験談的な事例は豊富に出てきているものの、実証的な研究はされてなかったため、今後本格的に実証研究を行おうという研究機関も出てきているとのことです。
身体を動かすタイプのゲームをリハビリテーションに利用する取り組みは、ナムコと九州大学病院の共同研究や、Wiiより先行して提供されているXavix(ザビックス)の介護施設向けサービスの提供など国内でも進められていますが、米国や英国などでも関心を集めてきており、各地の病院や介護施設でWiiを導入する動きが進んでいます。これらの取り組みについては以前にも次のような日本語記事で紹介されています。
『Wii Sports』をリハビリに応用する病院(inSide)
http://www.inside-games.jp/news/207/20750.html
老人ホームにはWiiを、専門の業者が全米で売込み中(inSide)
http://www.inside-games.jp/news/248/24840.html
投稿者「tfuji」のアーカイブ
Wiiリモコンを使ったマルチタッチホワイトボード
カーネギーメロン大学の大学院生、Johnny LeeさんのWiiリモコンの技術を応用して作ったソフトウェアの紹介ビデオが話題になってます。今日もMLで流れてました。
Wiiリモコンの認識機能をパソコンで制御するソフトウェアを開発して、プロジェクターで映し出したパソコン画面上にポインターを使って絵を描いたり、ウィンドウ制御をしたりできる、マルチタッチホワイトボード、あるいはタブレットPCの機能を実現しています。Wiiリモコンを使うと市販のそれらの製品よりも大幅に低コストでできるそうです。サンプルのソフトウェアと導入方法もJohnnyさんのウェブサイトで提供されています。Tech系のブログでは日本語でもいち早く紹介されてますね。
Wii リモコンで頭の位置を認識する VR システム(Engadget)
http://japanese.engadget.com/2007/12/23/desktop-vr-system-with-wiimote/
Wiiリモコンで今度はマルチペンタブレット(Engadget)
http://japanese.engadget.com/2007/12/20/multi-touch-pen-tablet-using-wiimote/
Wiiリモコンはエンジニアの創造性を刺激するようで、You TubeにはWiiリモコンでいろんな実験をした映像が載っています。これはWiiリモコンでロボットアームを動かす映像です。まずWiiリモコンをパソコンにつないでみるところから始まって、あとは使い手の興味に合わせてさまざまな応用が出てきています。
Serious Games Summit GDC のセッション内容
米国サンフランシスコで2月18-19日にゲーム開発者会議(GDC)の枠内で開催されるシリアスゲームサミットGDCの開催まであとひと月を切りました。今年も各方面のシリアスゲームの最新動向を理解するためのさまざまなセッションが行われる予定です。今年はGDCが例年よりもひと月早い開催となったため、開催内容の発表が遅れ気味でしたが、先週セッションのラインナップが発表となりました。まだ調整中のセッションが残っているようで、もう数セッション追加で発表されるようです。ここでは一部をピックアップしてご紹介します。
Serious Games Taxonomy (シリアスゲーム分類学)
Speaker(s): Ben Sawyer (Digitalmill) & Peter Smith (University of Central Florida)
シリアスゲームイニシアチブで活躍する2名のスピーカーが、さまざまな分野で数多くのシリアスゲームを分類して理解する枠組を提示。
GAMESTAR MECHANIC: Learning through Game Design (ゲームスター・メカニック: ゲームデザインを通した学習)
Speaker(s): Katie Salen (Parsons School of Design), Greg Trefry (Gamelab)
ニューヨークの小学校でゲームデザインを通した学習カリキュラムの開発を進めているスピーカーたちの取り組みを紹介。
Make this Game Better: THE REDISTRICTING GAME (「選挙区割りゲーム」のバージョンアップをみんなで考える)
Speaker(s): Chris Swain (University of Southern California)
USCで開発された選挙の区割り問題をテーマにしたゲームの開発についての話と、完成したゲームをもとに、来場者の中から2名が代表してこのゲームの次のバージョンを24時間で企画して、翌日のセッションで再び議論するという2部構成のインタラクティブセッション。
Game Engines for Serious Games (シリアスゲーム開発のためのゲームエンジン)
Moderator: Ben Sawyer (Digitalmill)
Panelists: Tim Holt (Oregon State University), Perry McDowell (Delta3D), Amulya K. Garga (Lockheed Martin), Roger Smith (U.S. Army Simulation, Training, and Instrumentation)
シリアスゲーム開発のために適したゲームエンジンの紹介とその開発事例のパネルディスカッション。
Serious Game World Reports (シリアスゲームワールドレポート、英国・フランス・日本・カナダ)
世界各国で進んでいるシリアスゲームの動向を紹介。日本の動向については、東大の馬場教授のグループによる発表が行われます。
Out of the Box: EA Fuels New Ideas with MADDEN & SIMS Titles (EAのマッデンやシムズタイトルにおける新しいアイデア)
大手ゲーム会社EAが主力タイトルのマッデンやシムシティ、ザ・シムズの新作で行っているシリアスゲームへの取り組みを紹介。
Meditation & Relaxation with Games (ゲームを利用した瞑想とリラクセーション)
Speaker(s): Ian Bogost (Persuasive Games), Tracy Fullerton (University of Southern California), Wild Devine
バイオフィードバックを利用したゲーム「Wild Devine」などのリラクセーションのためのシリアスゲームの事例。
Microsoft ESP: Taking FLIGHT SIMULATOR from Game to Serious Game (マイクロソフトESP: フライトシミュレータのシリアスゲーム化)
Speaker(s): Shawn Firminger (ACES Studio – Microsoft Game Studios)
マイクロソフトがリリースした、フライトシミュレータのゲームエンジンの開発経緯や利用用途などの話題。
この他にも多くの興味深いセッションが予定されています。シリアスゲームサミットへの参加には、GDCのSummits & Tutorial Pass または All Access Passのいずれかが必要です。
Serious Games Summit GDC 2008 に関する詳細は、下記GDC公式ウェブサイト(英語)をご参照ください。参加申込の詳細は日本語版ウェブサイトをご覧ください。
Serious Games Summit GDC
http://www.gdconf.com/conference/sgs.htm
GDC日本語版ウェブサイト
http://japan.gdconf.com/
マイクロソフト、シリアスゲーム市場に本格参入
ビジネスウィークのオンライン版に、マイクロソフトが自社のフライトシミュレータをもとに開発した、トレーニングシミュレーション開発プラットフォーム「Microsoft ESP」の提供を開始するという記事が掲載されました。
Microsoft’s Games Get Serious
ESP is a new software product based on the popular PC game Flight Simulator. It’s also Microsoft’s first foray into nonentertainment games
http://www.businessweek.com/innovate/content/dec2007/id20071220_808794.htm
(ESPのスクリーンショットと主な機能紹介)
http://images.businessweek.com/ss/07/12/1221_microsoft_esp/index_01.htm
この製品は、フライトシミュレータで提供されている3Dグラフィック、気候シミュレーション、マルチプレイヤー制御、リプレイ機能などの一連の開発ツールがゲームエンジンとしてパッケージ化されて、1ライセンス$799ドルで提供されます。ライセンスを利用することで、詳細な3Dグラフィックを駆使したトレーニングシミュレーションが開発でき、そのコストを大幅に削減できるというのが売りとなっています。
マイクロソフトは、これまでにも軍事用などの教育シミュレーションを開発する会社からライセンス供与をたびたび打診されていたものの、なかなか本業以外にリソースを割くゆとりがないために断っていたそうです。今回提供に踏み切った背景として、2007年現在、シリアスゲーム関連市場の規模およそ1億5000万ドル(約165億円)程度と推定(by Serious Games Initiative)され、この数字は2005年から3倍もの成長となっていること、さらに複数のアナリストの市場分析によるとシミュレーション、3Dモデリング関連市場は90億ドル(約9900億円)にのぼるということから、マイクロソフトとして市場に参入する価値を認めた、と記事で紹介されています。
マイクロソフト・フライトシミュレータは、最初のバージョンが発売されてからすでに25年にもなるそうです。これまでに開発してきた豊富なリソースをプラットフォームとして製品化することで、既存リソースの二次利用による収益化が期待できることもプラスとなっているようです。
このマイクロソフトESPの詳細は、来年2月にサンフランシスコで開催されるSerious Games Summit GDCでも紹介されるとのことです。
シリアスゲーム開発ツールとしては、Forterra SystemsのOLIVEをはじめ、新興の開発会社数社によって3Dシミュレーション開発プラットフォームが提供されていますが、今回マイクロソフトの参入によってさらにこの製品市場の動向に影響を与え、シリアスゲーム開発への関心もこれまで以上に高まることにつながると思われます。
CNNの希少動物保護ゲーム: Animal Rescue
10月に放送されたCNNの特番「Planet in Peril」の番組ウェブサイトで、希少動物保護をテーマとしたゲーム「Animal Rescue」が提供されています。
このゲームは、希少動物の密輸現場の取締りをシンプルに描写したミニゲームとしてデザインされています。檻の中にトラやサイなどの輸入が違法な希少動物が隠れていて、同じ動物を二つ続けて出せばポイントとなるという神経衰弱ゲームのフォーマットで、密輸業者が動き回って檻の中の動物を入れ替えたり、なかには普通のイヌやニワトリなどの合法動物も混ざっているという形でルールがアレンジされています。
開発はIan Bogost氏のPersuasive Gamesが担当しており、同社がこれまでに手がけてきた作品に共通するコミカルなテイストの「シンプルだけどちょっとハマる」タイプのゲームです。
ところで、同社が開発するアドバゲームが普通のアドバゲームと差別化している要素として、Bogost氏が著書「Persuasive Games: The Expressive Power of Videogames」で提示したコンセプト「Procedural Rhetoric」を意識してデザインの中に取り入れている点があります。Procedural Rhetoricとは、ゲームが取り扱うテーマに含まれる手続き的知識や行動の過程(Procedure)をルールや描写に組み込んだ表現形式のことを指しています。
すでに日本でもアドバゲームは数多くでてきていますが、広告する商品が全く関係のない形で扱われていたり、ゲーム要素と広告や学習の要素が分離していてあまりゲームとして提供する効果の薄いものが目立つのが現状です。実際、そうした広告や学習の要素を意味ある形でゲームに取り入れるというのは難しい課題ですが、このProcedural Rhetoricの考え方は、シリアスゲームやアドバゲームのデザインの一つのノウハウとして役に立つでしょう。同書「Persuasive Games」では、政治、広告、学習の各分野でProcedural Rhetoricを取り入れたゲームデザインの事例を豊富に挙げながら、その概念を詳しく解説しています。シリアスゲームの開発に興味のある方は読んでおいて損のない一冊だと思います。
DSで糖尿病管理:Glucoboyがリリース
ゲーム技術を利用した血糖測定器、グルコボーイ(Glucoboy)がリリースされました。このグルコボーイは、ゲームボーイ用(ニンテンドーDS共用)に開発されており、専用の機器をゲーム端末に接続して使用するようになっています。2種類のゲーム(と3つのミニゲーム)が提供され、測定した血糖値が目標値の範囲内になるとポイントが加算されて、新たなゲームが追加されるなどの要素が盛り込まれているようです。
Paul Wessel氏の発案で数年前からオーストラリアで開発が進められて、開発途中でもGames for Healthカンファレンスなどで紹介されて話題になっていましたが、任天堂からの許可を得るために3年かかるなどかなりの時間を経て、ようやく先月11月14日、世界糖尿病デーに合わせてリリースされたとのことです。
価格は299オーストラリアドル(約3万円)。現在はオーストラリアのみで販売しており、今後世界各国で提供する準備を進めているそうです。
SeriousGames Institute 訪問
Serious Games Sessions Europeの帰りに、英国コベントリー大学が今年設立したシリアスゲームズ・インスティテュート(Serious Games Institute)を訪問してきました。
このシリアスゲームズ・インスティテュート(SGI)は、コベントリー大学がウェストミッドランズ地域開発公社からの支援を受けて設立された、シリアスゲームによる地域産業振興の研究・開発拠点です。SGIは同大学のテクノロジーパーク内のビルに置かれ、大学出資の子会社、コベントリー・ユニバーシティ・エンタープライズが設備や運営面の管理を行っています。
このSGIの所在するイングランド中西部地域は、ゲーム会社が多く集積しており、地域の産業振興においてゲーム産業の支援に関心が高く、シリアスゲームがゲーム産業の活性化や地域産業全般の活性化につながるテーマとなるという判断のもと、地域産業振興の一環としてシリアスゲーム研究開発を推進する拠点となる同大学への支援実施となったとのことです。
コベントリー大学では研究成果の応用研究やビジネスへの技術移転を大学の経営戦略の中で積極的に行っており、テクノロジーパークには情報通信系を中心とする多くのベンチャー企業が入居して活動しています。SGIにはシリアスゲーム開発会社のPixeLearningが拠点をすでにSGI内の施設に移転して活動しているほか、仮想世界サービス開発会社などが入居して活動する予定です。
SGIは、3年間で310万ポンド(約6.5億円)の予算規模の研究開発拠点で、今後シリアスゲーム煮関連した応用研究、事業開発の支援を行っていき、既存の地域産業だけでなく、海外企業の事業参入や外国人研究者の支援も積極的に行っていくということです。
Serious Games Sessions Europe開催
12月3日、フランス・リヨンにてSerious Games Sessions Europeが開催されました。
今回で3回目を数えるこのカンファレンスは、前回まではCMPが運営していましたが、今回はCMPと契約解消し、主催者のAgence Rhone-Alpes Numerique とLyon Gameが直接運営する形での開催となりました。隣の会場でLyon GDCが同時開催、翌日からはGame Connection Europeも開催と、リヨンはゲームカンファレンスウィークでした。
このSGS Europeでは、主にヨーロッパ各地から集まったシリアスゲーム開発者、研究者による17の発表、展示ブースでは10数社の企業各社によるシリアスゲームや関連サービスのデモや紹介が行われました。
基調講演はシリアスゲーム開発会社BreakawayのCEO、Doug Whatlay氏が各分野に広がり続けるシリアスゲームの動向を解説し、これまでの同社の経験をもとにこの分野に参入する企業に向けたアドバイスが示されました。
先日お知らせしたように、アジアからは韓国ソウル中央大学のウィ・ジョヒン氏がこれまでの5年間に渡る韓国でのMMOゲームの教育利用の研究について発表し、シリアスゲームジャパンの藤本が日本でのニンテンドーDSに見られる学習・実用ソフトの増加など、独自の展開が進む日本のシリアスゲームの動向を解説しました。
そのほか、イギリスのシリアスゲーム開発会社PlayGenが開発したナノテクノロジーを学ぶゲームNanomission、PixeLearningのゲーム型社員教育プログラム、デンマークのSerious Games Interactiveが開発したパレスチナ問題を学ぶGlobal Conflict: Palestine、フランスのNet Divisionがロレヤルのビューティーサロンスタッフ教育のために開発したゲーム型教材など、ヨーロッパ各国の事例が紹介されました。
イタリアの開発会社による3Dプロジェクターを用いた没入環境開発や、スウェーデンの研究者による複数画面を配置したドライビングシミュレータと消防訓練環境の技術研究事例は、通常のパソコン画面上で提供されるアプリケーションの枠を超えた環境を提供する技術として、今後の実用化に向けた展開が期待されるものでした。
Serious Games Sessions Europe
http://www.sgseurope.fr/uk/home.html
(おまけ:この会の藤本の個人的な感想もこちらの個人ブログに書いています。)
Serious Games Sessions Europe
12月3日にフランスのリヨンで開催される「Serious Games Sessions Europe」にて、「東アジアのシリアスゲーム」というテーマで、シリアスゲームジャパン代表の藤本と、韓国ソウル中央大学のウィ・ジョヒン氏が発表を行ないます。
今回で三回目となるこのカンファレンスでは、シリアスゲーム開発会社として知られるBreakaway GamesのDough Whatley氏の基調講演をはじめ、ヨーロッパ各国のシリアスゲーム開発者、研究者による研究報告、事例発表が行われます。
Serious Games Sessions Europe プログラム
http://www.sgseurope.fr/uk/news.html
最近のシリアスゲーム関連イベント
今年の秋は、欧米各地で開催されるシリアスゲーム関連のイベントが増えています。9月以降に開催された、また今後予定されているイベントには次のようなものがあります。
Serious Virtual Worlds ’07 (9/13-14, コベントリー(英国))
Serious Games – Practice and Futures Workshop(9/18-19, シェブデ(スウェーデン))
Learning with Games 2007 (9/24-26, ソフィアアナポリス(フランス))
Nordic Serious Games Conference (11/9-10, ユバスキュラ(フィンランド))
Serious Games Canada symposium (11/27-28, モントリオール(カナダ))
I/ITSEC(11/26-29, 米国・フロリダ州オーランド)
Serious Games Sessions Europe (12/3, リヨン(フランス))
Serious Games Summit GDC (2008/2/18-19, 米国・サンフランシスコ)
Games for Health (2008/5/8-9, 米国・メリーライド州ボルチモア)
Advanced Learning Technologies Summit (2008/5/13-14, 米国・ノースカロライナ州カリー)
なお、日本でも、9月に東京大学で開催されたDiGRAカンファレンスで「Serious Games Day」が設けられて、世界のシリアスゲーム研究者による発表が多数行われました。
このようなシリアスゲームイベントは、各地のゲームカンファレンスの枠内で開催されることが多く、ちょうど今日から開催されるカナダ・モントリオールのシリアスゲームシンポジウムもモントリオールインターナショナルゲームサミットの中で行われています。