10月に放送されたCNNの特番「Planet in Peril」の番組ウェブサイトで、希少動物保護をテーマとしたゲーム「Animal Rescue」が提供されています。
このゲームは、希少動物の密輸現場の取締りをシンプルに描写したミニゲームとしてデザインされています。檻の中にトラやサイなどの輸入が違法な希少動物が隠れていて、同じ動物を二つ続けて出せばポイントとなるという神経衰弱ゲームのフォーマットで、密輸業者が動き回って檻の中の動物を入れ替えたり、なかには普通のイヌやニワトリなどの合法動物も混ざっているという形でルールがアレンジされています。
開発はIan Bogost氏のPersuasive Gamesが担当しており、同社がこれまでに手がけてきた作品に共通するコミカルなテイストの「シンプルだけどちょっとハマる」タイプのゲームです。
ところで、同社が開発するアドバゲームが普通のアドバゲームと差別化している要素として、Bogost氏が著書「Persuasive Games: The Expressive Power of Videogames」で提示したコンセプト「Procedural Rhetoric」を意識してデザインの中に取り入れている点があります。Procedural Rhetoricとは、ゲームが取り扱うテーマに含まれる手続き的知識や行動の過程(Procedure)をルールや描写に組み込んだ表現形式のことを指しています。
すでに日本でもアドバゲームは数多くでてきていますが、広告する商品が全く関係のない形で扱われていたり、ゲーム要素と広告や学習の要素が分離していてあまりゲームとして提供する効果の薄いものが目立つのが現状です。実際、そうした広告や学習の要素を意味ある形でゲームに取り入れるというのは難しい課題ですが、このProcedural Rhetoricの考え方は、シリアスゲームやアドバゲームのデザインの一つのノウハウとして役に立つでしょう。同書「Persuasive Games」では、政治、広告、学習の各分野でProcedural Rhetoricを取り入れたゲームデザインの事例を豊富に挙げながら、その概念を詳しく解説しています。シリアスゲームの開発に興味のある方は読んでおいて損のない一冊だと思います。