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Wiiリモコンを使ったマルチタッチホワイトボード

 カーネギーメロン大学の大学院生、Johnny LeeさんのWiiリモコンの技術を応用して作ったソフトウェアの紹介ビデオが話題になってます。今日もMLで流れてました。

 Wiiリモコンの認識機能をパソコンで制御するソフトウェアを開発して、プロジェクターで映し出したパソコン画面上にポインターを使って絵を描いたり、ウィンドウ制御をしたりできる、マルチタッチホワイトボード、あるいはタブレットPCの機能を実現しています。Wiiリモコンを使うと市販のそれらの製品よりも大幅に低コストでできるそうです。サンプルのソフトウェアと導入方法もJohnnyさんのウェブサイトで提供されています。Tech系のブログでは日本語でもいち早く紹介されてますね。
Wii リモコンで頭の位置を認識する VR システム(Engadget)
http://japanese.engadget.com/2007/12/23/desktop-vr-system-with-wiimote/
Wiiリモコンで今度はマルチペンタブレット(Engadget)
http://japanese.engadget.com/2007/12/20/multi-touch-pen-tablet-using-wiimote/
 Wiiリモコンはエンジニアの創造性を刺激するようで、You TubeにはWiiリモコンでいろんな実験をした映像が載っています。これはWiiリモコンでロボットアームを動かす映像です。まずWiiリモコンをパソコンにつないでみるところから始まって、あとは使い手の興味に合わせてさまざまな応用が出てきています。

Serious Games Summit GDC のセッション内容

 米国サンフランシスコで2月18-19日にゲーム開発者会議(GDC)の枠内で開催されるシリアスゲームサミットGDCの開催まであとひと月を切りました。今年も各方面のシリアスゲームの最新動向を理解するためのさまざまなセッションが行われる予定です。今年はGDCが例年よりもひと月早い開催となったため、開催内容の発表が遅れ気味でしたが、先週セッションのラインナップが発表となりました。まだ調整中のセッションが残っているようで、もう数セッション追加で発表されるようです。ここでは一部をピックアップしてご紹介します。
Serious Games Taxonomy (シリアスゲーム分類学)
Speaker(s): Ben Sawyer (Digitalmill) & Peter Smith (University of Central Florida)
シリアスゲームイニシアチブで活躍する2名のスピーカーが、さまざまな分野で数多くのシリアスゲームを分類して理解する枠組を提示。
GAMESTAR MECHANIC: Learning through Game Design (ゲームスター・メカニック: ゲームデザインを通した学習)
Speaker(s): Katie Salen (Parsons School of Design), Greg Trefry (Gamelab)
ニューヨークの小学校でゲームデザインを通した学習カリキュラムの開発を進めているスピーカーたちの取り組みを紹介。
Make this Game Better: THE REDISTRICTING GAME (「選挙区割りゲーム」のバージョンアップをみんなで考える)
Speaker(s): Chris Swain (University of Southern California)
USCで開発された選挙の区割り問題をテーマにしたゲームの開発についての話と、完成したゲームをもとに、来場者の中から2名が代表してこのゲームの次のバージョンを24時間で企画して、翌日のセッションで再び議論するという2部構成のインタラクティブセッション。
Game Engines for Serious Games (シリアスゲーム開発のためのゲームエンジン)
Moderator: Ben Sawyer (Digitalmill)
Panelists: Tim Holt (Oregon State University), Perry McDowell (Delta3D), Amulya K. Garga (Lockheed Martin), Roger Smith (U.S. Army Simulation, Training, and Instrumentation)
シリアスゲーム開発のために適したゲームエンジンの紹介とその開発事例のパネルディスカッション。
Serious Game World Reports (シリアスゲームワールドレポート、英国・フランス・日本・カナダ)
世界各国で進んでいるシリアスゲームの動向を紹介。日本の動向については、東大の馬場教授のグループによる発表が行われます。
Out of the Box: EA Fuels New Ideas with MADDEN & SIMS Titles (EAのマッデンやシムズタイトルにおける新しいアイデア)
大手ゲーム会社EAが主力タイトルのマッデンやシムシティ、ザ・シムズの新作で行っているシリアスゲームへの取り組みを紹介。
Meditation & Relaxation with Games (ゲームを利用した瞑想とリラクセーション)
Speaker(s): Ian Bogost (Persuasive Games), Tracy Fullerton (University of Southern California), Wild Devine
バイオフィードバックを利用したゲーム「Wild Devine」などのリラクセーションのためのシリアスゲームの事例。
Microsoft ESP: Taking FLIGHT SIMULATOR from Game to Serious Game (マイクロソフトESP: フライトシミュレータのシリアスゲーム化)
Speaker(s): Shawn Firminger (ACES Studio – Microsoft Game Studios)
マイクロソフトがリリースした、フライトシミュレータのゲームエンジンの開発経緯や利用用途などの話題。
 この他にも多くの興味深いセッションが予定されています。シリアスゲームサミットへの参加には、GDCのSummits & Tutorial Pass または All Access Passのいずれかが必要です。
 Serious Games Summit GDC 2008 に関する詳細は、下記GDC公式ウェブサイト(英語)をご参照ください。参加申込の詳細は日本語版ウェブサイトをご覧ください。
Serious Games Summit GDC
http://www.gdconf.com/conference/sgs.htm
GDC日本語版ウェブサイト
http://japan.gdconf.com/

マイクロソフト、シリアスゲーム市場に本格参入

 ビジネスウィークのオンライン版に、マイクロソフトが自社のフライトシミュレータをもとに開発した、トレーニングシミュレーション開発プラットフォーム「Microsoft ESP」の提供を開始するという記事が掲載されました。
Microsoft’s Games Get Serious
ESP is a new software product based on the popular PC game Flight Simulator. It’s also Microsoft’s first foray into nonentertainment games
http://www.businessweek.com/innovate/content/dec2007/id20071220_808794.htm
(ESPのスクリーンショットと主な機能紹介)
http://images.businessweek.com/ss/07/12/1221_microsoft_esp/index_01.htm
 この製品は、フライトシミュレータで提供されている3Dグラフィック、気候シミュレーション、マルチプレイヤー制御、リプレイ機能などの一連の開発ツールがゲームエンジンとしてパッケージ化されて、1ライセンス$799ドルで提供されます。ライセンスを利用することで、詳細な3Dグラフィックを駆使したトレーニングシミュレーションが開発でき、そのコストを大幅に削減できるというのが売りとなっています。
 マイクロソフトは、これまでにも軍事用などの教育シミュレーションを開発する会社からライセンス供与をたびたび打診されていたものの、なかなか本業以外にリソースを割くゆとりがないために断っていたそうです。今回提供に踏み切った背景として、2007年現在、シリアスゲーム関連市場の規模およそ1億5000万ドル(約165億円)程度と推定(by Serious Games Initiative)され、この数字は2005年から3倍もの成長となっていること、さらに複数のアナリストの市場分析によるとシミュレーション、3Dモデリング関連市場は90億ドル(約9900億円)にのぼるということから、マイクロソフトとして市場に参入する価値を認めた、と記事で紹介されています。
 マイクロソフト・フライトシミュレータは、最初のバージョンが発売されてからすでに25年にもなるそうです。これまでに開発してきた豊富なリソースをプラットフォームとして製品化することで、既存リソースの二次利用による収益化が期待できることもプラスとなっているようです。
 このマイクロソフトESPの詳細は、来年2月にサンフランシスコで開催されるSerious Games Summit GDCでも紹介されるとのことです。
 シリアスゲーム開発ツールとしては、Forterra SystemsのOLIVEをはじめ、新興の開発会社数社によって3Dシミュレーション開発プラットフォームが提供されていますが、今回マイクロソフトの参入によってさらにこの製品市場の動向に影響を与え、シリアスゲーム開発への関心もこれまで以上に高まることにつながると思われます。

環境問題を学べるSimCity最新作

 SimCityの最新作「SimCity Societies」について、米Electronic Arts(EA)と英国の大手エネルギー企業BPが協力して、地球温暖化の原因や影響を学べる要素を取り入れるとの発表がありました。「SimCity Societies」は前作「SimCity4」に続く同シリーズ最新版で、北米と欧州では11月15日発売とのこと。
日本語の記事もITmediaNewsに出ています。
EA、4年ぶりの「SimCity」は環境保護がテーマ(ITmedia news)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/12/news010.html
英語ですがSerious Games Sourceの記事の方が詳しいです。
EA, BP Partner For Climate Education In SimCity Societies(Serious Games Source)
http://www.seriousgamessource.com/item.php?story=15764
 今後このような形で、シリアスゲームの発想で市販ゲームに学習的な要素を高める動きが少しずつ増えてきそうで楽しみです。

ビジネスウィークで「ゲームのチカラ」特集

 ビジネスウィーク誌のウェブサイトで「The Power of Gaming」という特集記事が組まれています。
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BusinessWeek Special Report: The Power of Gaming
http://www.businessweek.com/innovate/di_special/20070813thepowerof.htm
 この特集は7本の記事で構成されており、ゲーム産業の市場規模が拡大(PwCの予測では2006年316億ドル→2011年418億ドル)し、テクノロジーも飛躍的に向上するなかで、社会的な用途で利用されるシリアスゲームが重要なキーファクターとなってきていることを論じています。マッキンゼー、IBM、ジョンソン&ジョンソン、フィリップスなどの社内研修用に利用されているシリアスゲームも紹介されています。また、大手ゲーム会社がシリアスゲーム市場に参入する例として、スクウェアエニックスと学研がSGラボを設立したことも紹介されています。

Food Force 最新情報

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 WFP 国連世界食糧計画が開発したゲーム「Food Force」のその後の状況についてお知らせします。
 無料配布されているゲームソフトのダウンロード数は、世界各国版合計で450万件に達する見込みとのことです。
 2005年10月にコナミから日本語版がリリースされて日本でも注目を集めましたが、現在のところ、英語、日本語、中国語、ポーランド語、ハンガリー語、フランス語、イタリア語版がリリースされています。
 2007年にはギリシャ語、ノルウェー語、フィンランド語、スウェーデン語、ドイツ語、ポルトガル語、アラビア語、スペイン語版の8ヶ国語版が新たにリリースされる予定で、年内には合計15カ国語版が提供されることになります。
 Food Forceプロジェクトの責任者、ジャスティン・ローチェ氏によると、続編の開発も進められており、今度は高めの年齢層を対象としたゲームを企画しているとのことです。(続編に関するアナウンス(英語)

ミシガン州立大学でシリアスゲームデザイン修士課程開設

 ミシガン州立大学がシリアスゲームデザイン修士プログラムを開設するとSerious Games Sourceで報じられています。
Michigan State University Launches Serious Game Design MA Program (Serious Games Source)
http://seriousgamessource.com/item.php?story=11426
 この修士プログラムは2007年秋から開始予定で、教育は同大学のテレコミュニケーション学部の教授陣が担当します。このプログラムの案内によると、ゲームデザインやコンピュータサイエンスなどを学部で学んだ人や、シリアスゲームが関わる各分野でゲームデザインに関心のある人々を主な対象としています。下記の5つのコアコースを履修したのち、修士論文または開発プロジェクトに取り組む二年間(21ヶ月)プログラムになるとのことです。また、シリアスゲームデザイン認定プログラムの履修生を年間20名まで受け入れており、「シリアスゲーム入門」、「シリアスゲーム理論」と選択科目一科目で認定証を受けることができます。
コア科目:
・「シリアスゲーム入門」
・「シリアスゲーム理論」
・「シリアスゲーム研究法」
・「シリアスゲームのデザインと開発」
・「デザインスタジオ(プロジェクト演習)」
(他、インターンシップや関連科目も選択で履修可)
2007年秋入学生の募集〆切は4月1日までで、出願や問い合わせは下記の同プログラムサイトにて行なえます。
ミシガン州立大学シリアスゲームデザイン修士プログラムWebsite
http://seriousgames.msu.edu/

“Making History”がTechnology & Learning’s 2006 Awards of Excellenceを受賞

Serious Gemes Source
 http://www.seriousgamessource.com/item.php?story=11303
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Muzzy Lane Softwareのシリアス・ゲーム“Making History”がTechnology & Learning’s 2006 Awards of Excellenceに選ばれた。
“Making History”は第二次世界大戦を舞台としたストラテジーゲームで、プレイヤーはチャーチルやスターリン、ルーズベルトといった当時の各国首脳となってさまざまな政治的駆け引きを行う。
2005年秋からアメリカの高校や大学で使われはじめた。Muzzy Lane社によると、インディアナのオークヒル・ハイスクールでは“Making History”を使うことで成績も上がった、ということである。
オークヒル・ハイスクールでの実践に関しては、オークヒル・ハイスクールの社会と世界史の教師David McDivittの記事に詳しい。
“Do Gamers Score Better in School?”
  http://seriousgamessource.com/features/feature_051606.php
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日本でもKOEIなどからさまざまな「歴史もの」ゲームが出ていますが、シリアス・ゲームという視点からすると、開発側(メーカー)・受け入れ側(教育現場)ともまだまだこれからという感じがします。シリアス・ゲームが認知されていくにつれて、今後は少しずつ実践が増えていくことを期待します。

マクドナルドインタラクティブ:シリアスゲームをネタにした反企業活動

 「地球環境を考慮しない経営」を批判するアンチアドバゲーム「マクドナルドビデオゲーム」を作られてしまったマクドナルド社が、またもシリアスゲームをネタに、社会活動家による批判行動を受けました。
 このハプニングは、6月5-6日に開催されたUK Serious Games Eventで起こりました。発表者として、マクドナルドの子会社「マクドナルドインタラクティブ」のメンバーが登場し、次のような発表をしました。
 「マクドナルドの子会社である我々は、米陸軍のアメリカズアーミーにインスパイアされて、McMarketplaceという幹部社員教育のための経営シミュレーションを開発した。利用した社員からは好評価を得たので、気候シミュレーションのモジュールを開発して追加した。すると、どんなやり方でも50年以内に地球環境が破壊されて、経営が破綻する。このシミュレーションで経営を維持するには、最初の5年以内にガス排出量を70%削減し、森林破壊を止めなければならなかった。おかしいので調査してみたところ、どうやらこれは本当らしいということがわかった。直ちに経営方針を改めて、環境破壊を止めなければならないと経営陣に訴えたところ、聞き入れてもらえなかった。このまま地球が破壊されていくのを見過ごすことはできないので、我々はマクドナルドを離れ、この真実を世に広める活動を行なうことに決めた。」(以上要旨。全文はこちらで読めます)
 会場では議論の的となり、かなりの聴衆がこの声明を信じたそうですが、ゲームブログ等で真偽のほどを確かめる動きがとられ、この発表が全て、社会活動家達による壮大なインチキであることが突き止められました。
 イタリアの反マクドナルドの活動家が、マスメディアを利用した社会活動を得意とするYesmenの手ほどきを受け、ホンモノっぽい会社Webサイトや、シミュレーションのスクリーンショットまで作りこんだプレゼン資料を制作して、このイベントで計画実行に及んだということです。
 イベントの主催者側はこのことを全く知らされていなかったとのことで、この件については一切ノーコメントで、イベントのウェブサイトも表紙のみにしてしまっています。主催者にはなかなか気の毒な状況ですが、この計画の首謀者が応えたインタビューの中で、主催者側が「マクドナルドビデオゲーム」をマクドナルドが作ったものだと勝手に勘違いして、(あきらかに反マクドナルドの)このゲームの開発者に招待のメールを送ったことからこのアイデアを思いついたのであって、主催者は自らこの災難を招いたのだ、とコメントしています。
 このハプニングは、シリアスゲームやゲームブログのコミュニティで話題となって、さまざまな議論を呼びました。事の顛末はWaterCoolerGamesに一番詳しくまとめられています。