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オーストリアのゲーム研究修士プログラム

 オーストリアのドナウ大学にゲーム研究の修士プログラムが開設され、2006年度の入学者を募集しています。
Danau University Krems Computer Game Studies
http://www.donau-uni.ac.at/de/studium/department/imb/plus/06185/index.php
 この修士プログラムの特徴は、各講座が短期集中のワークショップ形式で、それぞれ3〜5日程度で完結することと、ドイツ語圏のオーストリアですが、授業は全て英語で行なわれることです。この形態を取ることによって、より広範囲を対象にした学生募集を可能にすると同時に、他の言語圏からの講師招聘を柔軟に行なえるようになっています。各講座の講師を見ると、半数以上はアメリカやデンマーク等の他言語圏から招かれています。また、eスポーツやゲームベースドラーニングが講座ラインナップに含まれているところは、最近のゲーム研究へのニーズを踏まえてカリキュラムをデザインしている様子がうかがえます。
開講講座一覧:
必修講座:
・ Games and Society (ゲームと社会)
・ Critical Game Studies (ゲーム批評研究)
・ Media Studies (メディア研究)
・ Computer Game Technology I(コンピュータゲームテクノロジーI)
・ Computer Game Technology II (コンピュータゲームテクノロジーII)
・ Human Computer Interaction and Usability (ヒューマンコンピュータインタラクションとユーザビリティ)
・ Business of Gaming I (ゲームビジネス I)
・ Business of Gaming II (ゲームビジネス II)
・ Game Production(ゲーム制作)
選択講座:
・ Conceptual Game Design and Interactive Storytelling (ゲームコンセプトデザインとインタラクティブストーリーテリング)
・ Game Based Learning (ゲームベースドラーニング)
・ eSport Business Development (eスポーツビジネス開発)
・ Game Strategy and Virtual High Performance Teams (ゲームストラテジーとハイパフォーマンスなバーチャルチーム)
なお、詳しいプログラム紹介、講座概要は、上記の同プログラムのウェブサイト(英語)に掲載されています。

シリアスゲームと日本のトイレ

 Gamasutraの姉妹サイト、Serious Games Sourceに、ゴンザロ・フラスカ氏による「Serious Games And The Japanese Toilet: Extending ‘Serious Game’ Designs To Deliver More (シリアスゲームと日本のトイレ: より多くのことを伝えるためのシリアスゲームデザインの拡張)」というコラムが掲載されました。
 このコラムでは、「日本人はデザインを完成させる技術に定評があるが、日本のトイレは水を流すとタンクの上についた小さな蛇口から水が流れて手が洗えるようになっている。洗練された、エコロジカルで、本来のデザインにほんの少しだけ変更を加えることで、付加価値を生みだす素晴らしいデザインの例だ。この考え方はシリアスゲームのデザインにも必要だ。」という導入から、シリアスゲームをデザインする際の考え方として重要な点を述べています。
 このコラムの主なメッセージは、「トレーニングのためのシリアスゲームをデザインするにしても、シリアスゲームというスタイルをとった時点で、文化的、PR的な影響を持つものになるので、トレーニングを受ける人だけでなく、その家族や友達などの周囲の人たちもプレイすることを想定して、デザインの際にはPR的な要素のデザインにも気を配る必要がある。」というもので、実現のための方法として、「おまけ的なミニゲームを活用する」「社会性を考慮する」「(企業内トレーニングのシリアスゲームをデザインする際は)登場人物よりも、実践する環境のデザインに焦点を当てる」といったアドバイスが示されています。
Serious Games And The Japanese Toilet: Extending ‘Serious Game’ Designs To Deliver More(Serious Games Source)
http://seriousgamessource.com/features/feature_050206_japanese_toilet.php

Gamasutraインタビュー記事

少し前にGamasutraの記者から受けた、日本のシリアスゲーム関連の状況についての
インタビューの記事がGamasutraのシリアスゲームニュースサイトにて掲載されました。
Gamasutraの記事
http://www.gamasutra.com/php-bin/news_index.php?story=8960
The State Of Serious Games In Japan(インタビュー全文)
http://seriousgamessource.com/features/feature_041806_sg_japan.php

Food Force紹介記事

国連世界食糧計画(WFP)が開発したゲーム「Food Force(フードフォース)」がHotwiredの記事で出ていました。その中で、同ゲームプロジェクト責任者ジャスティン・ローチェ氏のコメントが興味深かったので引用して紹介します。
  「われわれのゲームは、市場を支配している大量の暴力的なゲームの対極にある。
  弾の一発も発射されないこのゲームで、われわれはシューティング・ゲームに
  費やされがちな子どもたちの時間を奪取しようとしているのだ」
  「大きくなったらWFPで働きたいと書かれた電子メールが子どもたちからたくさん
  届く。われわれのささやかなゲームがこのような影響を与えていると思うと喜ばしい」
記事全文はこちら。
食糧支援活動を学べるゲーム『Food Force』が人気(Hotwired)

シリアスゲーム本2冊リリース

 米国でシリアスゲームの一般解説本「Serious Games: Games that educate, train, and inform」と、開発者向けの入門書「Developing Serious Games」が発売されました。いずれもこれまでに議論されてきた内容を網羅的にカバーしてあり、資料的な情報も収録してあるので、これからシリアスゲームについてフォローしたい方にお勧めの内容に仕上がっています。GDCのシリアスゲームサミットをはじめ、シリアスゲーム関連のイベントに参加される方には、予習テキストとしてとても重宝すると思います。

シリアスゲームを斬る

 米国のゲーム情報サイト1up.comに、“You can’t be serious!: five famous game designers rehabilitate the world’s most most boring games”(冗談でしょ!五人の有名ゲームデザイナーが世界で最も退屈なゲームを修復)という記事が掲載されましたのでご紹介します。Virtual U、Virtual Leaderなどの5つのシリアスゲームを、エンターテイメントゲームとして作り変えるとしたらどんなデザインにするか、五人の実績あるゲームデザイナーたちが提案するという内容です。
 ゲームのデザイン上の問題点を指摘したり、ゲームの質を上げるためのアイデアを出すというよりは、それらのゲームをシリアスでなくするためのアイデアを適当に出すにとどまっています。本家のシリアスゲームMLでは、「ジョークとしては面白いけど、意味はない」「シリアスゲームバッシングしたい人がいるのでは」「オレらもヘイローとかGTAをシリアスゲームとしてデザインしたらどうなるかやってみたら面白いんじゃない?」といった議論がなされていました。
北米ではシリアスゲームも、一般ゲームサイトで取り上げられてネタにされるだけの認知を得てきたということでしょう。

海外での「シリアスマンガ」展開

シリアスゲームのMLへの投稿で、「翻訳アニメマンガ出版社のViz mediaと世界銀行が提携して、教育マンガを制作」というニュースが流れていました。「1 WORLD MANGA」シリーズというのを立ち上げて、貧困、エイズ、環境などの諸問題をテーマにした教育マンガを制作し、販売して利益を寄付することに加え、世界300ヶ所の図書館に無料配布する計画だそうです。
「世界銀行とVIZメディアは、若い読者たちに人類が直面するさまざまな重要課題について学んで関心を持ってもらうというビジョンを共有する。そして非常に人気の高いマンガのスタイルは、世界の開発諸問題についての教育を若者たちに行なっていく上で、強力な伝達手段となると考えている(上記リンクのプレスリリースより)」
アニメやマンガを教育・啓蒙に利用しようという発想は、日本では相当古くからあって、図書館に行けば歴史マンガ、企業や公共機関の広報パンフ等でもマンガは手法としてよく使われています。多くの一般のマンガも、教育的な要素を持ちながらも商業ベースで成功していることも、日本ではごく普通にマンガが人々の教養形成の重要な要素として文化に根付いていることを示しています。
マンガが日本社会にどう根付いていったかを見ていくことで、日本でのシリアスゲームの展開に関するヒントが多く含まれているようです。

企業のシリアスゲーム投資

「マイクロソフトがシリアスゲームに資金提供」という情報を
山口浩さんのブログからトラックバックで送っていただきました。山口さんのブログでは、当サイトがあまりカバーしていないMMOG関連の話や、私がサボっている英語での情報発信などされています。
アメリカのシリアスゲーム系プロジェクトへは、紹介記事にあるマイクロソフトや、リープフロッグ社(Education Arcadeプロジェクトのスポンサー)など、企業から直接提供される資金の流れもあります。金額の多寡はあるかと思いますが、日本でもゲーム会社やITメーカー系の財団がいくつかあって、研究助成が出されていたり、企業の寄附講座として大学へ資金提供される例がありますので、その流れで今後シリアスゲームプロジェクトへの資金提供も進んでいくと期待しています。
#まだどこもやっていない今のうちは不安もありますが、誰もやっていないところにこそ旨味があるということで、ぜひ積極的にご検討いただければと思います>ご関心をお持ちの企業の皆さま

ゲームが教育の場で受けない10の理由

シリアスゲーム研究者のLisa Galarneauが「ゲームが教育の場で受けない10の理由」という記事を書いていますのでご紹介します。
引用元
1.「エデュテイメント」時代、多くのコストをかけたわりにささいな成果しか得られなかった。多くの人はインチキな売り文句にだまされたと感じている。
2. 多くの「教育用」ゲームは「チョコレートで包んだブロッコリー」であって、少しはやる気を起こさせても、なんら教育効果として目立ったものがあるわけではない。
3. 教師やスタッフの多くはいまだIT機器に慣れていない。
4. 教師や親の多くは、子ども達が楽しみながら学ぶということはありえないと信じている。彼(女)らはゲームがつまらないものや有害なものであるという煽りたてるマスメディアの影響を受ける傾向にある。
5. 多くのゲームは、慣れて何かができるようになるまでに20分以上かかる。ほとんどの授業はそんな時間を確保できないし、試験のための勉強に時間を割かなければならないので、ゲームを使って学習するような贅沢な時間の使い方はできない。ゲームは宿題にできないし、学校はデジタルデバイドのために家庭で十分なハードを利用できない生徒がいると考えている。
6. 面白いゲーム/シミュレーションは、概して教育者や学者にとっては教育用途には正確さが不十分であり、逆に正確なものは退屈でありがちだ。
7. ゲーム/シミュレーションは、必ずしも直接的にスキルを学ばせるのに適しているわけではなく、むしろスキルや能力の改善、ものの見方の変化を促すといった、時間が経ってから成果が明らかになるような細かな問題に適している。残念なことにほとんどのゲームはその有効性が教育者から十分に理解されていない。
8. ビジネス界と違って、教育界では学習が重要で不可欠なこととして考えられていない。企業や軍隊でゲームやシミュレーションが活用されているのは、それらの組織で本当の変化や学習が求められているからであり、進化や学習なしには生き残れないからである。
9. ゲームが教育に使えると考えるには、信念と理念とリスクテイクが必要となる。そんなことができるリーダーシップがとれる体制のある組織はそんなに多くない。
10. 成功した教育用のゲームはあるものの、それらは教育の主流からは認識されていない。

Serious Games Talent Directory Project

Proposal for a “Serious Games” Developer and Talent Directory
Mission: Create a set of objective criteria that will allow a vetted listing of developers and other third-party talent related to the building of serious game style products and projects in order to stimulate wider adoption of such games.
Details: The Serious Games Initiative is asking for suggestions in how to build a database of vendors, and talent, that could help peers, funders, and other interested parties more readily build serious game projects. The database would allow potential listees to submit information about their company, personal skills, and related project history. Volunteer reviewers would verify the information against a published set of criteria. If the reviewers found the information is properly verifiable then the record would be approved and published. It could subsequently be updated and re-reviewed for the life of the database.
Users could search the database to find useful partners, and contractors to work with.