だいぶ海外ニュース紹介が遅れ気味なので、これからしばらく少し古いものも含めてキャッチアップしていきたいと思います。
さっそくこれはちょっと古めで10月に報じられたニュースですが、米マイクロソフトリサーチとニューヨーク市立大をはじめとする研究機関によって、デジタルゲーム学習の研究コンソーシアム、Games for Learning Institute (G4LI),が設立されました。
このコンソーシアムは、マイクロソフトリサーチが150万ドル(約1億5000万円)を出資し、ニューヨーク市ほかの参加主体の出資も合わせて合計300万ドル(約3億円)規模の予算が当初3年分の活動のために提供され、中学の数学と科学カリキュラムの学習に寄与するデジタルゲームの研究を推進するというものです。
これらの科目でデジタルゲームを利用した際の学習効果の評価を中心に、ゲームのどのような要素がなぜ学習に有効なのかをより深く理解を得るための研究を行っていくとのことです。
コンソーシアムにはニューヨーク市立大のほか、コロンビア大、ダートマス大、ロチェスター工科大学ほかの各大学が参加しています。
ソース:
Microsoft Research, NYU Announce Games For Learning Institute (SeriousGamesSource)
Microsoft Research, NYU and Consortium of University Partners Create First Scientific-Based Game Research Alliance to Transform Learning(米マイクロソフトのプレスリリース)
投稿者「tfuji」のアーカイブ
動物愛護団体PETAの「クッキングママ」パロディゲーム騒動
国際動物愛護団体のPETA(People for the Ethical Treatment of Animals、動物の倫理的扱いを求める人々の会)が、料理をテーマとした人気ゲーム「クッキングママ」(日本ではタイトー、北米ではMajescoが販売)をパロディにしたゲーム「Cooking Mama: Mama Kills Animals」を先日リリースし、その後の一連の騒動が話題となっています。
デジタルネイティブについてよく知るための1冊
NHKスペシャルで「デジタルネイティブ」の特集が放送されたのをきっかけに、ネット上でもデジタルネイティブが話題にのぼっている様子が目立つようになりました。
デジタルネイティブについて日本語で解説した本はそれほど出ていないようなので、やや手前味噌で恐縮ですが、拙訳の「テレビゲーム教育論―ママ!ジャマしないでよ勉強してるんだから」では、デジタルネイティブについて丁寧に解説してますので、あらためてご紹介します。
本書では、デジタルネイティブの子どもたちの生態、考え方、その能力を伸ばすための付き合い方などを詳しく解説しています。
(「テレビゲーム教育論」目次より)
第2部 「デジタルネイティブ」の出現
第4章 子どもたちは私たちとは違う―彼らはネイティブで私たちは移民だ
第5章 ほんとに子どもたちの思考の仕方は違うのか?
第6章 オンライン世界で生活するデジタルネイティブたち
下記のような楽しいエピソードも豊富に紹介しながら、学術的な知見や教育におけるデジタルゲームの活かし方、付き合い方を論じています。
SGラボ制作のアドバゲーム「〜伝説の烏龍茶〜大紅袍物語ゲーム」
SGラボがサントリーより受注して企画・制作したノベル形式のアドベンチャーゲーム「〜伝説の烏龍茶〜大紅袍物語ゲーム」が配信開始されました。
このゲームはSGラボがサントリー向けに提供するアドバゲーム第二弾で、ウーロン茶発祥の地、中国福建省の武夷山を舞台にしたノベル形式のアドベンチャーゲームです。ウーロン茶の中でも“茶王”と称される「大紅袍」をテーマに、ストーリーを楽しみながらウーロン茶に関する知識に触れることができる内容になっています。
SGラボではこのほかにも、以前に制作を手がけたエバラ食品のアドバゲームの第二弾として、エバラ食品創立50周年キャンペーン用アドバゲームの提供を行っており、これまでの同社のアドバゲームが顧客企業から好評そうな様子が伺えます。
また同社では、コンシューマ向け製品として、地震に遭遇した際の対処を学べるシリアスゲームを今冬発売予定しているとのことで、今後の展開が期待されます。
サントリー「〜伝説の烏龍茶〜大紅袍物語ゲーム」
http://www.suntory.co.jp/softdrink/oolongtea/daikouhou/
エバラ食品創立50周年キャンペーン用アドバゲーム
http://www.ebarafoods.com/campaign/50th/
日本賞トークセッション「ゲームを教育メディアとしてどのように活かすか?」
教育コンテンツの国際コンクール第35回“日本賞”のイベントとして行われたトークセッションで、レベルファイブ社長の日野晃博氏と、東京大学大学院情報学環教授で日本デジタルゲーム学会会長の馬場章氏が「ゲームを教育メディアとしてどのように活かすか?」というテーマで対談を行いました。その模様がファミ通.comで紹介されています。
第35回日本賞のイベントにレベルファイブの日野晃博社長、東大の馬場章教授が登場(ファミ通.com)
http://www.famitsu.com/game/news/1219279_1124.html
記事では、レベルファイブが開発を手がけた「ドラゴンクエストVIII」や「レイトン教授」シリーズを題材とした教育コンテンツとしてのゲームの議論や、馬場教授の研究グループで取り組んでいる「大航海時代オンライン」の教育利用研究の話題などが語られた様子が紹介されています。
VISIONWEBのシリアスゲーム対談
eラーニングの総合情報サイト VISIONWEB のeラーニングに関する対談コーナー「Talking about e-learning」で、SGラボ社長の前田徹哉氏のインタビューが掲載されています。記事では、同社のシリアスゲーム事業の取り組みについて語られています。
「シリアスゲーム」がeラーニングの重要なコンテンツへ(VISIONWEB)
http://www.elearning.ne.jp/discussion/002/
日本のeラーニング業界でシリアスゲームがどれくらい浸透しているのかわかりませんが、シリアスゲームが直接的に活用できる業界ですし、今後もこのような形で注目される動きが進んでいくことが期待されます。
デジタルゲームの教育利用研究のハンドブック刊行
デジタルゲームの教育利用研究に関する論文集、「Handbook of Research on Effective Electronic Gaming in Education」がInformation Science Referenceより刊行されました。
同書は3分冊のボリュームで、世界15カ国の145名の研究者によって執筆されたゲームの教育利用に関する76本の論文が収録されています。各教育・研究分野における、さまざまなタイプのデジタルゲームの教育利用について、全部で3000本以上の関連論文が引用されて書かれた論文や参考文献ガイドが掲載されており、このテーマの研究を幅広くカバーした論文集です。
下記の目次のように、この分野の著名な研究者の多くが寄稿しており、米国の研究だけでなく、ヨーロッパやオーストラリア、中東などで行われている研究についてもカバーされています。この手の論文集としては、MMO関連の論文の割合が多めになっている点が、最近のデジタルゲームの教育利用研究のトレンドを反映していると言えると思います。
図書館や研究機関向けの商品のためか価格が高額で、個人利用には適さない感じですが、この分野に関心のある企業、研究機関などで購入可能な方にとっては、備えておくと参考資料としてとても重宝すると思います。
CNNが米大統領選をテーマとしたニュースゲームを提供
「Persuasive Games」の著者イアン・ボゴスト氏のゲームスタジオ「Persuasive Games」で開発した米大統領選挙をテーマとしたニュースゲーム「Campaign Rush」がCNN.comで公開されました。ウェブサイトで無料でプレイできます。(ソース:Water Cooler Games)
このゲームは、選挙事務所での活動を題材としたFlashゲームで、選挙活動員が電話やメールを受けて資料をコピーし、電話口まで資料を持っていくという動作をカジュアルなクリックゲームとしてコミカルに表現しています。
ボゴスト氏は、先日ご紹介したオバマ候補応援ゲーム、「Debate Night」を開発したゴンザロ・フラスカ氏と共に、4年前の米大統領選でハワード・ディーン氏の選挙キャンペーンゲーム「Howard Dean for Iowa Game」を開発しており、このほかにもニューストピックを題材としたニュースゲームの開発を手がけています。
Campaign Rush(CNN.com)
http://edition.cnn.com/ELECTION/2008/campaign.rush/
IT Mediaでゲーム研究に関する連載開始
IT Mediaで「ゲームとアカデミーの素敵なカンケイ」と題したゲーム研究をテーマとした連載が開始され、第1回としてDiGRA Japan会長で東京大学教授の馬場章氏のインタビューが掲載されています。
記事では、日本のゲーム研究の現状、馬場研究室で取り組んでいる「オンラインゲームの教育目的利用のための研究」、ゲームリテラシーとゲームの社会的地位向上の必要性などのトピックについて語られています。
ゲームとアカデミーの素敵なカンケイ(第1回)――東京大学 大学院情報学環 馬場章教授 (IT Media +D Games)
http://plusd.itmedia.co.jp/games/articles/0810/01/news016.html
GameSpotにVirtual Heroes CEO インタビュー掲載
現在、米国で最も勢いのあるシリアスゲーム開発会社の一つ、Virtual HeroesのCEO、Jerry Heneghan氏のロングインタビューが掲載されました。
Q&A: Virtual Heroes training real heroes (GameSpot)
http://www.gamespot.com/news/6198546.html
PSP版として提供されることが発表された(プレスリリース)、ヒルトン・ガーデン・インの従業員向けインタラクティブトレーニングゲーム「HGI Ultimate Team Play」をはじめ、軍事、医療、ビジネスなどの各分野で進行中の同社の開発プロジェクトが取り上げられています。米国土安全保障省とGeorge Washington University Medical Centerと同社が開発した、救急対応シミュレーション「Zero Hour: America’s Medic」も公開されており、一般向けにも$15でまもなくダウンロード販売開始されるとのことです。
米陸軍の「America’s Army」は、シリアスゲームの代表例としてよく知られていますが、このゲームで提供される救急対応トレーニングの知識のおかげで実際に人命救助に貢献できたという話(下記記事参照)も紹介されています。
また同社は、人気ゲームタイトルを手がけたクリエイターが活動していることでも知られています。以前にもご紹介したように、「サイレントヒル」(コナミ)のアートディレクターとして知られる佐藤隆善氏は現在同社で活動しています。インタビュー中では、佐藤氏が同社に参画することになった経緯が語られていて興味深いです。ほかにも「グランド・セフト・オート」の開発会社Rockstar Gamesで活動していた開発者たちが同社製品の開発に携わっていることなども触れられています。
関連記事:
「サイレントヒル」のTakayoshi Sato氏、シリアスゲームについて語る
Gamer uses virtual training to save lives (Yahoo Games)