ロバート・ウッド・ジョンソン財団が公募していたGames for Health研究プロジェクトで採択された12の研究プロジェクトが先月末に発表されました。
Discovering How Video Games Can Motivate Healthy Behaviors: More Than $2 Million Awarded to 12 Research Teams (Robert Wood Johnson Foundation)
http://www.rwjf.org/pr/product.jsp?id=30932
この研究プロジェクトは、ヘルスケア関連のシリアスゲームの実証研究を行う研究者と開発者のプロジェクトチームを対象に、同財団より総額約200万ドル(約2億1000万円)規模の研究補助金が提供されて行われるものです。この分野の研究者として知られるカリフォルニア大学サンタバーバラ校のDr. Debra Liebermanがまとめ役となり、全米の研究機関から申請された112件の中から選ばれた12の研究プロジェクトにそれぞれ最大20万ドル(約2100万円)の研究資金が提供され、1〜2年間かけて研究が進められます。
採択されたのは下記の12件の研究プロジェクトです。発表資料を抄訳して研究の概要をご紹介します。
・コーネル大学コミュニケーション学部(ニューヨーク州)
食育モバイルゲーム「Mindless Eating Challenge」の開発と評価。ゲームで効果的に正しい食習慣を教えるための教育手法を研究。
・インディアナ大学スクール・オブ・ヘルス(インディアナ州)
健康的なライフスタイルを促進するための代替現実ゲーム「BloomingLife: The Skeleton Chase」の開発と評価。競争型アプローチと協調型アプローチの比較研究。
・メインメディカルセンター(メイン州)
音楽ゲーム「ダンス・ダンス・レボリューション(DDR)」を利用したエクサゲーミングの家庭利用の実証研究。肥満の子どもがいる家族にDDRまたは万歩計を一定期間利用してもらい、体重等の指標の変化や家庭内のコミュニケーションへの影響を比較する。
・ユニオンカレッジ心理学部(ニューヨーク州)
バーチャルサイクリングシステム「Seniors Cyber」の開発と評価。50歳以上の成人を対象に、このシステムを利用しての運動面や精神的、生理的効果を測定、評価する。
・カリフォルニア大学サンディエゴ校スクール・オブ・メディシン(カリフォルニア州)
市販エクサゲームの「Xavix」を利用した子ども向けエクサテインメントの研究。行動選択理論をベースとした研究アプローチで、11〜15歳の子どもたちに数ヶ月Xavixを利用してもらい、利用状況や身体的な変化、行動変容などを研究する。
・セントラルフロリダ大学カレッジ・オブ・メディシン(フロリダ州)
依存症再発防止のための仮想現実環境の研究。18〜65歳のアルコール依存症患者にゲーム型のセラピーツールを利用してもらい、行動変容や健康面から依存症再発防止の効果を比較する。
・フロリダ大学カレッジ・オブ・パブリックヘルス・アンド・ヘルスプロフェッションズ(フロリダ州)
アクションゲームを利用した高齢者の日常の認知能力改善の研究。PS2のゲーム「クレイジータクシー」を65歳以上の高齢者にプレイしてもらい、従来の視覚的注意力改善トレーニングを受けた人と受けてない人とでどのような違いがあるか、またゲームがトレーニング継続の意欲に与える影響を評価する。
・ノースカロライナ大学チャペルヒル校スクール・オブ・パブリックヘルス(ノースカロライナ州)
ゲームプレイにおけるコントローラーと操作方法の違いがもたらす影響の研究。18〜35歳の被験者に異なるタイプのコントローラー(従来のゲームコントローラーとWiiリモート)、入力方法の異なるゲーム(ダンスパッド、ギターコントローラーを利用するゲーム)をプレイしてもらい、生理的な反応の違い、ゲームへの没入感ややる気の違い、プレイ時間の違いなどを評価する。
・サウスカロライナ大学リサーチ・ファウンデーション(サウスカロライナ州)
市販のエクサゲームを利用した障がい者の身体機能改善の研究。脳梗塞などで身体が不自由になった人たちにWiiまたはEyeToyのゲームをプレイしてもらい、運動能力やバランス感覚の改善への影響を比較する。
・南カリフォルニア大学スクール・オブ・シネマティックアーツ(カリフォルニア州)
健康的ライフスタイルを促進するモバイルソーシャルネットワークゲーム「Wellness Partners」の効果測定研究。SNSにバーチャルペットやロールプレイングなどの要素を持ったゲームを被験者に利用してもらい、一人用プレイ版と複数プレイ版をプレイした場合の行動変容などの効果の違いを比較評価する。
・バーモント大学スクール・オブ・メディシン(バーモント州)
嚢胞性線維症(CF症、のうほうせいせんいしょう)管理のためのブレスフィードバックゲームの開発と評価。嚢胞性線維症の子どものいる家庭で呼吸によって入力するゲームを利用してもらい、治療への影響や改善効果を評価する。ぜんそくなどの他の肺疾患への応用に向けた研究を行う。
・ワシントン大学スクール・オブ・メディシン(ワシントン州)
糖尿病患者の血糖値管理のための食生活改善を支援するモバイルゲームの開発と評価。18歳以上の2型糖尿病患者にカロリーや炭水化物摂取量の計算に関するゲームを利用してもらい、血糖値管理行動の改善度を測定、評価する。