Games for Health 2008 レポート:ゲーム依存症研究編

 Games for Health 2008 レポート、今回はゲーム依存症研究編です。このテーマのセッションは二つとも参加しなかったので、Slideshareに公開された発表資料とSerious Games Sourceのレポートを参考にしてます。
 ゲーム依存症を取り巻く問題を研究しているNeils Clark氏が、この問題の現状認識と改善に向けた展望などについて以下のような内容を発表しました。


・現状のゲーム依存症研究の問題点として、オンラインゲームがまだ未発達だった13年前に書かれたインターネット依存症の8項目の不完全な判定基準がそのままオンラインゲーム依存症の判定基準に用いられていること、また、大人と子どもでゲームへの依存傾向が異なるにもかかわらず、多くの研究では大人と子どもの区別がされていないことなどがある
・実際に依存症的な状態のオンラインゲーマーがいることなどの現状について「ゲームに問題がないわけではない」という認識を持つべきだが、まだ判定基準で測れることと実際にゲームの中で起きていることのかい離が大きく、まだこの問題を明確に把握する前段階にいるという認識もあわせて持つ必要がある
・この問題をよりよく理解する要素として、ゲームがもたらす「没入感」を脳がどう処理しているのかということ、プレイヤーの「カルチャー」やコミュニティ的な側面をどう位置づけていくのかということ、「ゲームと人のインタラクション」のより詳しいメカニズム、これらの3点が重要な要素となる
・オンラインゲームと一口にいっても、ゲームのタイプや依存に向かうパターンはそれぞれ異なるため、依存症のケースを分析するには、ゲームとプレイヤーの関係をモデル化する必要がある
・ゲーム依存症問題を現状のように安易に病理学的に捉えるのはさまざまな点で問題があり、必ずしも問題でない状態までを問題視する傾向がある。たとえば現実生活で問題を抱えている人が、World of Warcraft内のコミュニティで仲間と交流できる場があることで現実生活の抑圧から解放されているような例を見落とすことにつながる
・これらの問題の解決に向けて、ゲーム開発者側は、プレイヤーに長時間ゲームに没頭させ続けずに、ゲームから少し頭を切り替えるきっかけをゲームの中で提供するなど、ゲームデザイン面で対応できることを取り入れていくことが考えられる。実際にオンラインゲームの開発者の間でそのような取り組みも見られる
・研究者側は、研究者同士が連携して、この分野の最新動向を共有しながら研究に取り組み、インターネット依存症の判定基準の使い回しではなく、オンライゲームの状況に合った判定基準を形にしていく必要がある
参考:
GFH: Neils Clark On Moving Beyond ‘Game Addiction’(Serious Games Source)
http://www.seriousgamessource.com/item.php?story=18586
Beyond Game Addiction by Neils Clark (presentation slide)
http://www.slideshare.net/neilsclark/gaming-addiction
★残りの連載予定:
・リハビリゲーム研究
・医療教育用シミュレーション&仮想世界
・全体総括