国内のシリアスゲーム事例のなかで、ウェブで無料で提供されているものをいくつかご紹介します。
「ライフシミュレーション人生劇場」
宮崎県の就職相談支援センター「ヤングJOBサポートみやざき」が提供しているゲーム型ウェブコンテンツです。ゲームは、分岐型のアドベンチャーゲームとクイズ、パズルゲームが組み合わさった形になっており、15歳から65歳までの人生におけるさまざまなイベントを経験し、キャリアの選択を行いながら、定年退職までの人生の過程を概観する内容になっています。
「財務大臣になって予算を作ろう−予算作成ゲーム−」
財務省が提供しているゲーム型ウェブコンテンツです。予算の各項目を増減させて新年度予算を作成する過程に触れながら「プライマリーバランスを意識した予算編成の重要性」を啓蒙することを意図して作られているようです。なお、財務省はこのほかにも「ゴー!ゴー!ふぁいなんすタウン(音に注意)」という子ども向けの(脱力系)ゲームコンテンツを提供しています。
「国際緊急援助 被害者を救え! 国際緊急援助隊医療チーム 派遣シミュレーションゲーム」
外務省系の財団法人、国際協力推進協会が提供するゲーム型ウェブコンテンツです。国際緊急援助隊の一員となって、被災国での援助活動の過程に触れながら、この活動の意義や役割、活動内容を理解することを目的に制作されているそうです。ストーリーベースのクイズ教材になっていて、活動に関わる基礎的なクイズに答え、その解説を読みながら進める構成になっています。
これらの事例を評価する際には、先日ご紹介した最近の海外事例もあわせて見ていくと、ゲームのつくりや学習要素の扱い方などを考えていく上で参考になります。また、拙書「シリアスゲーム―教育・社会に役立つデジタルゲーム」では、「できの悪いゲーム・優れたゲームの特徴」を解説しています。
できの悪いゲームの特徴
(1)画面の構成や操作方法がわかりにくく,プレイ感を損なっている
(2)ゲームの操作方法の説明が冗長で,ゲームプレイと分離している
(3)学習要素とゲームプレイが分離している
(4)学習内容に関係のない設定や余計なギミックが多い
(5)何度もプレイしたいと思わせる仕掛けがない
よくできたゲームの特徴
(1)画面の構成や操作方法がわかりやすく,ストレスなくプレイできる
(2)ゲームの操作方法をプレイしながら理解できる
(3)学習要素がゲームのなかにバランスよく配置されている
(4)対象ユーザーと学習内容に合った設定や演出を施している
(5)一度で飽きずに,何度もプレイしたくなる仕掛けがある
このような項目も、これらの事例の良い点や課題となる点を分析する際の参考にしてみてください。