ゲームデベロッパーズカンファレンス(GDC)期間中の3月5-6日にサンフランシスコにて開催される、シリアスゲームサミットGDCまで、あと一週間ほどに迫ってきました。今回開催される40数セッションの中から、いくつか見所をご紹介します。
1. キーノート:
今年のキーノートは3セッションあり、いずれもシリアスゲームの現在の方向性や関心に沿ったテーマのセッションが提供されています。1つ目は、スクウェア・エニックスのチーフストラテジスト、乙部一郎氏による同社のシリアスゲーム分野の戦略や取り組みについて(3/5, 9-10am)。ゲーム大国日本の大手ゲームパブリッシャーが、シリアスゲーム市場をどう捉えているかに海外からも注目が集まっており、それに応える内容となることが期待されます。
二つ目は、MITの研究者たちを中心に進められているOne Laptop per Child (OLPC)プロジェクトのSJ Klein氏による講演。学校教育におけるコンピュータ利用教育の中でゲームが有望な教育コンテンツとして考えられており、その最新の動きをシリアスゲームの観点から語られます(3/6, 9-10am)。米国の学校教育分野では、ワン・トゥ・ワン・コンピューティング、生徒一人一台のラップトップを利用できる学習環境をしようという動きが盛んで、州単位、学区単位での取り組みが各地で行われています。そのため、このセッションでは、シリアスゲームの学校教育分野における展開を考える上で参考になる内容になることでしょう。
三つ目のキーノートは、 代替現実ゲーム(Alternate Reality Games)の研究者でゲームデザイナーのJane McGonigal氏によって、代替現実ゲームとシリアスゲームの接点、シリアスゲームとしての可能性を議論するセッションです(3/6, 11:45-12:45pm)。代替現実ゲームは、大人数が仮想ストーリーに現実世界で参加し、リアルと現実が交錯する形で展開されるゲームで、新製品プロモーションなどで利用されている手法です。これまでのこのスタイルのゲームに関する研究から得られた知見から、シリアスゲームのゲーム性の幅を広げるために参考となるアイデアが得られることが期待されます。
2. 開発の参考となる研究・デザインセッション
多人数参加型のシリアスゲーム開発のための低予算のツールの紹介とその利用法や具体例の解説セッション(Lightweight and Innovative MMP Technologies for Serious Games, 3/5, 10-12pm)、ゲーム研究者たちによる、ゲームの学習効果測定・評価の最新動向を議論するパネルセッション(Testing Assumptions: Creative Approaches to Gathering Evidence of Serious Game Impacts, 3/5, 11:45-12:45pm)、シリアスゲームイニシアチブのBen Sawyer氏による低予算シリアスゲーム開発プロジェクトのチュートリアル(Budget Conscious Serious Games, 3/6, 10:30 – 12:30pm)など、そのほかにも多くのシリアスゲーム開発を成功させるための知識を吸収できるセッションが提供されています。
3. ケーススタディ、ポストモーテム
最新のシリアスゲームタイトルの紹介、数年にわたり取り組まれてきたシリアスゲーム開発プロジェクトの事後検証(ポストモーテム)セッションも豊富に提供されます。MITで開発された中学生向けの数学や読み書き学習アドベンチャーパズルゲーム「ラビリンス」の紹介(Labyrinth: Keeping the Play in Learning Games, 3/5, 2pm-)、同じくMITでネバーウィンターナイツのゲームエンジンを利用して長い時間をかけて開発された米国史学習ロールプレイングゲーム「レボリューション」プロジェクトの事後検証セッション(Colonial Williamsburg: Revolution Postmortem – How Commercial Game Engines Affect Pedagogical Design, 3/5, 5pm-)、カーネギーメロン大学ETCのスピンオフ企業Etcetera Edutainmentで開発された発送センターの安全管理シミュレーションの開発プロジェクトのケーススタディ(Alcoa SafeDock: A Serious Game Design Case Study, 3/5, 3:20 -3:50pm)。他にも多くの最新シリアスゲーム開発の動向を知るためのセッションが提供されます。
4. ネットワーキング
シリアスゲームの各テーマ別グループミーティングが初日と二日目のランチタイム、二日目のセッション開催前に提供されています。また、初日の最後には、シリアスゲームサミットのレセプションも提供されており(3/6, 6-8pm)、食事やドリンクを楽しみながらシリアスゲーム関係者と交流するよい機会です。
なお、シリアスゲームサミットの情報は、GDCの日本語版公式ウェブサイトで提供されています。
シリアスゲームサミット開催情報(日本語)
http://japan.gdconf.com/conference/seriousgamessummit.htm