米国心理学会のゲームの効果に関する声明

 8月に米国心理学会(APA)の年次大会においてデジタルゲームの効果に関するセッションが行われ、その発表内容が同学会のプレスリリースとしてアナウンスされました。
PLAYING VIDEO GAMES OFFERS LEARNING ACROSS LIFE SPAN, SAY STUDIES (American Psychological Association)
http://www.apa.org/releases/videogamesC08.html


 大会では、このテーマの研究に取り組む各分野の研究者からの下記の4つの発表が行われました。
“Four dimensions of Video Game Effects,” William Stone, BS, and Douglas A. Gentile, PhD, Iowa State University;
“Games, Stealth Assessment and Learning,” Valerie Shute, PhD, Florida State University;
“Informal Scientific Reasoning in Online Game Forums,” Constance Steinkuehler, PhD, and Sean C. Duncan, MA, University of Wisconsin at Madison;
“Children’s Problem Solving During Video Game Play,” Fran C. Blumberg, PhD and Sabrina S. Ismailer, BA, Fordham University,
 リリースによると、各発表で言及された効能は次のようなものです。
・「子どもたちはビデオゲームをプレイしながら認知知覚スキルを向上している。年長の子どもは単に娯楽としてゲームをプレイしようとする一方で、年少の子どもほど問題解決に取り組む傾向が見られた」
・「暴力的なゲームをプレイする生徒は、暴力的でないゲームをプレイする生徒よりも、敵対心が強く、不寛容で暴力を普通のこととして見る傾向がある」
・「その一方で、社会的なゲームをプレイする生徒は、他者と協力的に学校生活を送る傾向がある」
・「ゲームプレイ時間の長い生徒は、プレイ時間の短い生徒よりも学校の成績が悪く、肥満傾向にある」
・「腹腔鏡手術を行う外科医のうち、普段ビデオゲームをプレイする人は、プレイしない人よりも処理時間が短く、ミスが少ない。これは性別や手術経験などの他の属性よりも影響度が大きかった」
・「ゲームの効果にはさまざまな側面があり、単に善悪で分けられるものではない。ゲームの性質によって効果は異なり、さまざまな用途で強力な教育ツールとなり得る」
・「ゲームを利用した学習活動は、通常の授業を補足することができる。ワールド・オブ・ウォークラフトを利用して科学的思考を教える活動を行ったところ、生徒たちは協力的な活動によって単独活動よりも問題解決が早く行えること、ゲームを通してシステム、モデル、フィードバックなどの概念、数学的思考などを問題解決に取り入れている」
 以上のように、これまでに学術的なゲーム研究の中ですでに示されていた結果を「学術的にゲームの効果がどこまで明らかになっているか」をレビューした内容だったようです。
 すでに多くの各分野の学会でゲームの効果について議論されていますが、APAのような大規模な権威ある学会においてもこのテーマが取り上げられていることからも、米国の学術界においてゲーム研究への関心が広がりつづけていることが伺えます。