国際動物愛護団体のPETA(People for the Ethical Treatment of Animals、動物の倫理的扱いを求める人々の会)が、料理をテーマとした人気ゲーム「クッキングママ」(日本ではタイトー、北米ではMajescoが販売)をパロディにしたゲーム「Cooking Mama: Mama Kills Animals」を先日リリースし、その後の一連の騒動が話題となっています。
このゲームは、サンクスギビングのためにどれだけのターキーがひどい目にあって殺されているか(サンクスギビングを祝う定番料理のためにこの時期ターキーが大量消費されるため)を訴えるために制作されています。人気お料理ゲームのクッキングママのフォーマットで、「ターキー・ロースト」のレシピゲームの間にターキー虐待の様子を紹介するビデオを挟むなどして、ターキー料理への意欲を削ぐ試みをしつつ、ターキー肉の代わりに豆腐を使った「豆腐ターキー・ロースト」のレシピをゲームで紹介しています。
ゲームはおなじみのクッキングママのゲームのつくりそのままに、ターキーをさばくプロセスをややグロに描写したレシピゲームになっています。ゲームのつくりとしては情報提供や普及活動のための細かい工夫もしていて、よくできたニュースゲームと言えますが、権利面も含めてかなり問題があり、極端な活動を行うことで悪名高いPETAの意図通りの物議を醸す内容になっています。
ゲームは公開すぐに注目を集め、これに販売元がどのような反応を示すかに関心が高まっていましたが、公開から数日たった昨日、クッキングママの北米での販売元のMajescoがこのゲームに対して公式コメントを出しました。ゲームのキャラクターのママからの「私はラタトゥイユにネズミを入れたりしないし(アニメ映画の「レミーのおいしいレストラン」ネタ)、みんなが食事をお腹いっぱい楽しんでくれることだけを願って、幅広いレシピを作っています」という気の利いたコメントを交えながら、Wii版の新作「Cooking Mama World Kitchen」にはベジタリアン向けメニューもたくさん収録されていることをアピールしています。
これに対し、PETAも即座に公式声明として、Majesco側の寛大なコメントに対して感謝を示すと共に更なるベジタリアン支援を求め、今後さらにベジタリアン向けのレシピに力を入れるなら「200万人以上のPETA支援者はこのゲームのプロモーションに全面的に協力する」とのコメントを出しました。
Majescoはちょうど年末商戦に向けてクッキングママシリーズ最新作の「Cooking Mama World Kitchen」をリリースしたばかりのタイミングでの騒動で、同社の対応次第ではゲームのイメージにマイナスになるところでしたが、今回はこの騒動を逆手にとって同作品のパブリシティにつなげることに成功した様子です。
ここしばらく業績低迷に苦しむMajescoですが、今回は動物虐待とは何も関係のないのにPETAの標的にされていいとばっちりを受けたような状況に対し、企業のリスクコミュニケーションのよいお手本とも言えるような対応でうまく乗り切ろうとしています。同作品はタイトーのゲームでもあるので、今後どう展開するかわかりませんが、ニュースゲームが巻き起こす影響とその取り巻く状況を見るには面白い事例だと言えると思います。
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