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UbisoftがDS禁煙ゲームを開発

 大手ゲーム会社のUbisoft が「My Health Coach: The Easyway to Stop Smoking」というタイトルの禁煙支援のためのDSソフトを今年11月に発売すると発表し、海外の各ゲーム情報サイトで報じられています。
Ubidays 08: Stop Smoking coming to the DS, rated ages 3 and up (Destructoid.com)
 ベストセラーとなっている禁煙指南書の著者、Allen Carr氏の監修でCarr氏の禁煙メソッドをDS版にアレンジしたものだそうです。禁煙メソッドをベースとした15種類のゲームが含まれているとのこと。任天堂が川島隆太教授のベストセラー書籍を元に「脳トレ」を出して大ブレイクしたことは海外でも知れ渡っており、この流れを当然意識しての動きなのだろうと思います。

カーネギーメロン大学のネットワークセキュリティ教育ゲーム

 カーネギーメロン大学が子ども向けのネットワーク・コンピュータセキュリティ教育のためのゲーム、「My SecureCyberspace Game」を開発し、下記のウェブサイトで無料提供しています。
 このゲームは、小学4−6年生対象のFlashゲームで、3つのミッション(Mail mission(悪質メールを見分ける)、Chatroom mission(チャットルームでの個人情報の扱い方)、Web site mission(悪質なサイトを見分ける))が提供されており、今後、ネチケット、著作権、コンピューターウィルス、いじめ等など、インターネットを楽しく使用する上で、必要なルールやマナーを学ぶことができるミッションが順次追加される予定とのことです。
 昨年10月末に正式リリース後、このゲームがカリキュラムの一部として全米各地で34校ほど(主にペンシルバニア州)で使用されています。ネットセキュリティが専門でない学校の先生でも利用しやすいように、ゲームと合わせて、アメリカの学校教育指導のガイドラインに合わせたカリキュラム案や補助教材も提供されています。
My SecureCyberspace Game 公式サイト
http://www.carnegiecyberacademy.com/
ゲームのダウンロードページ
http://www.carnegiecyberacademy.com/gettingStarted.html
carnegieCyberAcademyThumbnail.jpg
(カーネギーメロン大学の開発チームの伊是名さんから情報をいただきました。ありがとうございます。)

IBMが環境学習MMOをリリース

 IBMが環境学習のためのマルチプレイヤーオンラインゲーム「PowerUp」をリリースしたと報じられています。
IBM Announces Environmental Learning MMO For Kids (Gamasutra)
http://www.gamasutra.com/php-bin/news_index.php?story=17422
powerup.jpg
このゲームは、子ども向けの環境学習のために作られており、架空の惑星を舞台にして太陽光、水力、風力に関するミッションが提供されており、惑星の環境が破壊されてしまう前に問題を解決するという内容です。下記のゲームウェブサイトから無料でダウンロードでき、授業で使用するための教員ガイドも合わせて提供されています。
PowerUpウェブサイト
http://www.powerupthegame.org/

CNNの希少動物保護ゲーム: Animal Rescue

 10月に放送されたCNNの特番「Planet in Peril」の番組ウェブサイトで、希少動物保護をテーマとしたゲーム「Animal Rescue」が提供されています。
 このゲームは、希少動物の密輸現場の取締りをシンプルに描写したミニゲームとしてデザインされています。檻の中にトラやサイなどの輸入が違法な希少動物が隠れていて、同じ動物を二つ続けて出せばポイントとなるという神経衰弱ゲームのフォーマットで、密輸業者が動き回って檻の中の動物を入れ替えたり、なかには普通のイヌやニワトリなどの合法動物も混ざっているという形でルールがアレンジされています。
 開発はIan Bogost氏のPersuasive Gamesが担当しており、同社がこれまでに手がけてきた作品に共通するコミカルなテイストの「シンプルだけどちょっとハマる」タイプのゲームです。
 ところで、同社が開発するアドバゲームが普通のアドバゲームと差別化している要素として、Bogost氏が著書「Persuasive Games: The Expressive Power of Videogames」で提示したコンセプト「Procedural Rhetoric」を意識してデザインの中に取り入れている点があります。Procedural Rhetoricとは、ゲームが取り扱うテーマに含まれる手続き的知識や行動の過程(Procedure)をルールや描写に組み込んだ表現形式のことを指しています。
 すでに日本でもアドバゲームは数多くでてきていますが、広告する商品が全く関係のない形で扱われていたり、ゲーム要素と広告や学習の要素が分離していてあまりゲームとして提供する効果の薄いものが目立つのが現状です。実際、そうした広告や学習の要素を意味ある形でゲームに取り入れるというのは難しい課題ですが、このProcedural Rhetoricの考え方は、シリアスゲームやアドバゲームのデザインの一つのノウハウとして役に立つでしょう。同書「Persuasive Games」では、政治、広告、学習の各分野でProcedural Rhetoricを取り入れたゲームデザインの事例を豊富に挙げながら、その概念を詳しく解説しています。シリアスゲームの開発に興味のある方は読んでおいて損のない一冊だと思います。

DSで糖尿病管理:Glucoboyがリリース

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 ゲーム技術を利用した血糖測定器、グルコボーイ(Glucoboy)がリリースされました。このグルコボーイは、ゲームボーイ用(ニンテンドーDS共用)に開発されており、専用の機器をゲーム端末に接続して使用するようになっています。2種類のゲーム(と3つのミニゲーム)が提供され、測定した血糖値が目標値の範囲内になるとポイントが加算されて、新たなゲームが追加されるなどの要素が盛り込まれているようです。
 Paul Wessel氏の発案で数年前からオーストラリアで開発が進められて、開発途中でもGames for Healthカンファレンスなどで紹介されて話題になっていましたが、任天堂からの許可を得るために3年かかるなどかなりの時間を経て、ようやく先月11月14日、世界糖尿病デーに合わせてリリースされたとのことです。
 価格は299オーストラリアドル(約3万円)。現在はオーストラリアのみで販売しており、今後世界各国で提供する準備を進めているそうです。

SeriousGames Institute 訪問

 Serious Games Sessions Europeの帰りに、英国コベントリー大学が今年設立したシリアスゲームズ・インスティテュート(Serious Games Institute)を訪問してきました。
 このシリアスゲームズ・インスティテュート(SGI)は、コベントリー大学がウェストミッドランズ地域開発公社からの支援を受けて設立された、シリアスゲームによる地域産業振興の研究・開発拠点です。SGIは同大学のテクノロジーパーク内のビルに置かれ、大学出資の子会社、コベントリー・ユニバーシティ・エンタープライズが設備や運営面の管理を行っています。
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 このSGIの所在するイングランド中西部地域は、ゲーム会社が多く集積しており、地域の産業振興においてゲーム産業の支援に関心が高く、シリアスゲームがゲーム産業の活性化や地域産業全般の活性化につながるテーマとなるという判断のもと、地域産業振興の一環としてシリアスゲーム研究開発を推進する拠点となる同大学への支援実施となったとのことです。
 コベントリー大学では研究成果の応用研究やビジネスへの技術移転を大学の経営戦略の中で積極的に行っており、テクノロジーパークには情報通信系を中心とする多くのベンチャー企業が入居して活動しています。SGIにはシリアスゲーム開発会社のPixeLearningが拠点をすでにSGI内の施設に移転して活動しているほか、仮想世界サービス開発会社などが入居して活動する予定です。
 SGIは、3年間で310万ポンド(約6.5億円)の予算規模の研究開発拠点で、今後シリアスゲーム煮関連した応用研究、事業開発の支援を行っていき、既存の地域産業だけでなく、海外企業の事業参入や外国人研究者の支援も積極的に行っていくということです。

英単語を学んでお米を寄付するゲーム:FreeRice

 英単語学習ゲームと寄付活動を組み合わせたウェブサイト、FreeRiceへの関心が高まってきています。
Freerice
http://www.freerice.com/
 このウェブサイトは、表示される英単語クイズに答えて正解すると、一問正解につき10粒のお米が寄付され、WFP国連世界食糧計画を通して貧しい国の人々へ提供されます。ユーザーが英単語を学べば学ぶほど貧困問題への貢献ができるという仕組みです。正解すると寄付したお米がたまっていく様子が表示されます。
 寄付される米の資金は、正解するとページ下に表示されるスポンサーが提供する形で、通常のクリック型の広告課金の仕組みで動いているようです。英単語クイズの仕組みは、正解すると難易度が上がり、間違えると下がる設定になっており、レベル50段階で調整されるそうです。難易度レベルはクイズ画面下に小さく表示されます。
 提供されている統計によると、10月に開始して約1ヶ月で、約10億7000万粒を記録しており、すでに(正解のみカウントで)延べ1億以上クリックされていることになります。初日の10月7日の830粒からどんどん増えて、最新の11月9日の記録は6325万粒(632万クリック)まで急速な成長を示しています。
 このウェブサイトは、知識学習+社会啓蒙のシリアスゲームの区分で捉えられますが、広告モデルを組み合わせることで社会啓蒙から一歩進めて具体的な貢献活動も実現しています。技術的に単純でありながら問題解決のアクションレベルを高めており、よいシリアスゲームのモデルケースと言えるでしょう。

Wiiとセカンドライフを利用した訓練シミュレーション

 WiredVisionで、Wiiリモコンとセカンドライフを組み合わせて、訓練シミュレーション環境を構築しようという研究が紹介されています。
『Wii』+『Second Life』で、訓練用シミュレーター(1)
http://wiredvision.jp/news/200707/2007073022.html
『Wii』+『Second Life』で、訓練用シミュレーター(2)
http://wiredvision.jp/news/200707/2007073121.html
 自由度の高いバーチャル環境と、人間の自然な動作に近い直感的な入力装置としてのWiiリモコンを組み合わせると、現在よりも一歩進んだ訓練シミュレーション環境が実現できるという期待があり、各分野での取り組みや専門家たちのコメントが紹介されています。
 このほかにも、Wiiリモコンを入力装置として活用しようという関心は高まっているようで、下記のビデオのようにロボットアームを動かしたりという取り組みが進められているようです。

world without oil 続編

一週間ほど前に紹介させていただいたWorld Without Oilの続編です。
現在Week14まで進んでおり、アメリカが(本当は全世界なのですが)大変なことになっています。石油不足から流通システムがストップし、停電が頻発し、人々は都市から避難し始め、タイミングが悪いことにハリケーンが南部を襲ったようです。こちら や こちら の方が毎日書かれているので、流れをつかむのに参考になります。こちら のVideoも参考になります。
毎日、Week*として情報が追加されるのですが、その情報は、新しいニュースに加えて、参加者がブログORビデオOR音声でもたらした情報を取り上げる形になっています。このWWOの管理者は、情報をピックアップし、議論を促進するファシリテーターの役割を担っているようです。
これからも追って行きたいと思います。また、見ているだけではわからないこともあると思うので、参加してみたいと思います。

石油のない世界をシミュレートするWorld Witout Oil

石油がなくなったらどうなるんだろう?このWorld Without Oil(WWO)というゲームはその疑問に答えてくれるかもしれません。
WWOのサイトでは毎日石油が枯渇してきた世界のニュースを発信します。そのニュースは、今国で起こっていることや、国による発表、それと参加者に対する質問からなりたっています。(質問は、たとえば、ガソリンが1ガロンあたり4ドル上がるとあなたの家計にどのような影響を与えますか?などです。)参加者はそのニュースを読み、ブログ、メール、画像、音声のいずれかの方法で情報を発信します。そして、ゲーム内での評価ランキングを競います。
このようなゲームは、代替現実ゲーム(the alternate reality game、略してARG)と呼ぶそうです。詳しい情報はここを参照してください。あるストーリーのもとで、ネットなどのメディアを用いて、多人数がコラボレーションする形で、実際に行動を起こすゲームのことのようです。WWOの場合には、ゲームで実際に皆の意見を集めることで一番良い解決策を見つけることが目的のようです。ざっくり言うと、石油の不足が個人の生活にどのような影響を与えるかをたくさん集めることで、大きな解決策を導こうとしているのではないかと思います。
Halo2のプロモーションに使われたARGと言われている、I Love Beesの開発者たちもこのWWOに参加しています。そのニュースはこちら。 開発者のGDCでのプレゼンスライドはここで見れます。 インタビューはこちらです。
学校において使うことも考えられていて、先生向けの教育ガイドが用意されています。正直なところ、これがゲームなのか、どうやって個々の投稿を価値のある情報に集約するのか(WIKI、BBSなどは用意されています)、など疑問は多々ありますが、要チェックではあるでしょう。
広野淳平